2021.02.02 ■三井住友海上 新経営体制に関する記者会見、舩曵氏が新社長に[2021年1月29日]

 三井住友海上は1月29日、新経営体制に関する記者会見をオンラインで開催し、舩曵真一郎副社長が4月1日付で新社長に就任することが発表された。同日付で原典之社長は会長に、柄澤康喜会長は取締役に就任する。舩曵副社長は会見で、「世界トップ水準の保険金融グループとしての姿をより明確にするため、世界のリスク、課題解決をリードするイノベーション企業を目指す」との考えを示した。
 記者会見は、「Zoom」によるオンラインライブ開催となった。
 はじめに、原社長が社長交代の経緯について述べ、MS&ADグループホールディングス社長との兼務体制の解消を理由に挙げた。MS&ADグループでは、2018年度からの中期経営計画「Vision 2021」において世界トップ水準の保険金融グループの実現に向けてデジタライゼーションの推進、人材戦略、ポートフォリオ変化、グループ内連携強化を重点に取り組み、また、20年度から2年間の「ステージ2」を変革のステージと位置付け、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による国内損保事業の収益構造の強化、海外事業体制の変革などに取り組んでいる。
 一方で、今回のコロナ禍により社会環境、産業構造が大きく変化する中、原社長は昨年6月にMS&ADグループホールディングスの社長に就任して三井住友海上社長との兼務となったが、「こうした大きな環境変化の下においては戦略の策定、実行のスピード感といった面では兼務のメリットがあるが、監督と事業執行という面では兼務を解消した方が望ましく、また、国内損保事業の収益構造の強化策や海外事業体制の変革においてすでに実行フェーズに入ってきていることから、この機に兼務体制を解消することにした」と述べた。
 続いて、舩曵氏があいさつし、「このようなコロナ禍において社長職の指名を受けたことを踏まえ、保険事業者としての使命をあらためてしっかり認識し、社会に貢献できるよう努めていきたい。当社は中期経営計画においてデジタル化などに取り組んできたが、世界トップ水準の保険金融グループの実現が見えてきたのではないかと考えている。今後は世界トップ水準としての姿をより明確にするために、未来にわたって世界のリスク、課題解決をリードするイノベーション企業を目指していきたい」と述べた。
 この後、記者との間で質疑応答が行われた。舩曵氏を後任に選んだ理由を問われた原社長は、「今まで営業、商品開発、経営企画など幅広い業務を担っており、直近では重点戦略であるデジタル戦略を担当してDXを活用した成長戦略、生産性向上策を取りまとめて強力に推進している。ビジョンの構想力、構築力に優れており、困難なことでも突破する行動力を持ち、また、人脈を構築する力なども評価した」と述べた。一方、新型コロナウイルスの流行や自然災害の多発、人口減少など損保業界を取り巻く課題に対しての認識や会社の成長につなげていく手法について質問を受けた舩曵氏は、「当社グループでは、本年度からCSV(Creating Shared Value)をDXによって実現していくことを標榜しているが、これを実現するに当たっては、まず解決すべき社会的課題を明確にしていくことが求められると思っている。足元、コロナ禍の影響や課題が多いが、未来にわたっては気候変動リスクが世界、日本、そして保険業界、当社にとって最も大きなリスクになると考えている。気候変動リスクへの対応という領域で当社が世界のリーダーシップを目指していきたいと思っており、そのために、カーボンニュートラルの推進や再生エネルギーの普及、自然災害に対する補償といったテーマにおいて世界でイニシアティブをとれるような事業基盤をつくっていくことを考えて事業運営していきたい」と答えた。
 【舩曵真一郎(ふなびき・しんいちろう)氏の略歴】1960年5月11日生まれ。83年3月神戸大経営学部卒業、同年4月住友海上入社、2007年4月三井住友海上商品本部自動車保険部部長(商品企画担当)、08年4月千葉埼玉本部埼玉西支店長、10年4月営業企画部長、12年4月経営企画部長、13年4月執行役員経営企画部長、15年4月常務執行役員東京企業第一本部長、17年4月取締役専務執行役員、MS&ADインシュアランスグループホールディングス執行役員グループCIO、グループCISO、18年4月MS&ADインシュアランスグループホールディングス執行役員グループCIO、グループCISO、グループCDO、19年4月MS&ADインシュアランスグループホールディングス専務執行役員グループCIO、グループCISO、グループCDO、20年4月取締役副社長執行役員、MS&ADインシュアランスグループホールディングス執行役員グループCDO(デジタライゼーション推進)、現在に至る。