2021.01.28 ■JICT SaaSシステム提供開始、自社Gで培った保険テック技術集約[2021年1月21日]

 保険スタートアップ企業のjustInCase Technologies(以下、JICT)は1月21日、デジタル保険基盤のSaaS型システムである「Master」の提供を開始した。同社の保険テックシステムは兄弟会社である少額短期保険業者のjustInCase(以下、JIC)で利用されており、これまでに約2年で五つの自社保険商品の他、他社との協業による保険サービスを複数生み出してきた実績を持つ。JICTでは、コロナ禍で保険業界のデジタル化が進んだ今、これまで以上に迅速な商品開発や顧客満足度のさらなる向上を後押しするサービスとして提供に注力していく考えだ。
 SaaS型システム「Master」は、①クラウドを利用したシステム基盤②アプリ基盤③マーケツール基盤―の三つで構成されている。
 保険システム基盤には、契約加入保全のバックエンド機能や保険API接続機能、リスク分析・保険料計算機能などがあり、アプリ基盤にはAPI接続を活用した保険募集UI/UX、Push通知などの顧客接点強化ツール、各種IoTデバイスとの連携機能が用意されている。
 こうしたシステムに加えて、マーケツール基盤を備えている点が「Master」の大きな特徴となっており、保険会社は、デジタルマーケティングレポート機能やABテスト効率化ツール、OMOマーケティング機能などを使って約定率を効果的に最適化できる。
 同社では、「Master」の導入により、保険業務運営の効率化や顧客接点の増加、契約数の増加を実現できるとしており、導入に当たっては、ユーザーである保険会社の要望に合わせて機能を組み合わせていく。
 すでに東京海上日動とジェイアイ傷害火災が初期パートナーとして同システムの採用を発表している。
 JICとJICTの代表を務める畑加寿也氏は「Master」の提供を決めた理由として、昨今のコロナ禍を挙げる。コロナ禍で保険会社のデジタル化は急速に進んだが、それと同時に、レガシーシステムが足かせとなって思うように動けない部分があるという課題も浮き彫りになってきた。保険会社のデジタル推進部門の担当者と話す中で、「ITがボトルネックになっている」という話を聞く機会が増えたと感じた同氏は、自社の技術を正式な商品として提供することでこうした課題解決に一石を投じることができるのでは、と考えたという。
 畑氏は「Master」の提供について、「JICでは『わりかん保険』を開発したが、これは従来の保険開発手法では実現不可能な商品。『Master』には当社グループが商品開発をする中で培ってきたノウハウを詰め込んだ。こうした機能をパートナーである生損保会社に使っていただくことで、当社の掲げる『助けられ、助ける喜びを、すべての人へ。』というビジョンの実現に近付くことができたら」と展望する。
 今後は、多様な保険商品の保険金請求プロセスに対応するツールの提供も視野に、さらなるサービスの充実を図っていく方針だ。