2021.01.27 ■三井住友海上/あいおいニッセイ同和損保 国内M&A向け表明保証保険発売[2020年12月25日]

 三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は昨年12月25日から、企業間M&A取引の契約書に規定される「表明保証条項」に違反した場合の損害を補償する表明保証保険の引受対象に国内企業間取引を新たに追加し、「国内M&A向け表明保証保険」として販売を開始した。和文約款により買主付保だけでなく売主付保形式で保険手配できる商品は業界初(12月25日時点、両社による)となる。
 近年、日本国内では中小企業を中心とした事業承継や大企業によるベンチャー企業の買収などが増加しており、今後も国内M&A取引等の増加が見込まれる。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、中小企業の事業再生や大企業における一部門売却(カーブアウト)の急速な増加が見込まれる。こうした中、両社では、企業の持続的な成長、事業承継等の課題解決の一手段となるM&A取引を支援するため、国際間M&A取引に加えて、国内企業間取引も引受対象とした「国内M&A向け表明保証保険」を開発した。
 M&A取引で締結される買収契約書には、一般的に「表明保証条項」が規定される。これは、売主が買主に対して、潜在債務や偶発債務が存在しないことなど、M&A取引実行の前提となる企業や事業の状態を「表明」し、「保証」する条項。これに反する事実(以下、表明保証違反)が判明した場合、売主が買主に損害賠償等を「補償」することとなる。また、表明保証する範囲、違反時の補償限度額、補償請求できる期間等の条件が折り合わない場合、取引成立の阻害要因になることもある。
 本商品は、取引の買主にとっては、保険手配によって、売主が要求する補償限度額・期間等と買主が希望する条件とのギャップを埋めることができ、表明保証違反に起因して買主が被る損害額を引受保険会社に直接請求でき、取引成立後の売主との関係を良好に維持することができる。取引の売主にとっては、売主の資力または担保が限定的である場合、保険手配により売主の補償資力を補完でき、将来的な買主からの補償請求に保険で対応できるため、当該事業からの完全な撤退が可能となる。売主付保は、表明保証違反が発生した場合の担保として売主が買主から金銭の預託を求められたときの代替手段等に活用できるほか、売主が買主に対して表明保証保険を手配させたい場合で買主がそれを望まないときにも活用できる。
 三井住友海上
 三井住友海上では、保険の対象とする表明保証の範囲等を原則としてオーダーメードで設計する。また、柔軟な保険設計を維持しつつ、競争力のある保険料水準を実現し、より活用しやすくしている。買主付保で対象とするM&A取引の規模が2億円以上の場合、保険料イメージは500万円以上となり、売主付保でM&A取引の規模が1~5億円の場合、保険料イメージは300万円以上となる。さらに一般的に保険料とは別に発生する見積もり費用を原則無料とした。顧客は検討に要するコストを削減でき、従来より利用しやすくした。
 本商品の取り扱いには、M&A実務、法律知識などの高度な専門性が必要なところから、同社は、M&A実務や本商品に関して深い知見やノウハウを有する専門代理店㈱タイムマシーンアンダーライターズ(稲田行祐代表取締役CEO)と提携し、個々の取引に応じた、きめ細かな保険設計を実現する。
 また、三井住友海上経営サポートセンター(以下、経営SC)を活用することで、労務リスクの軽減にも役立ち、M&A取引実行前から一気通貫したサポートを行う。これによって、M&A取引で生じやすい表明保証・補償の交渉における売主と買主間の利害対立による交渉の長期化や、M&A取引の不成立等を防ぐことができる。
 経営SCは、主に中堅・中小企業を対象に、さまざまな経営リスクや経営課題の解決を支援している。3万5000社超の支援実績があり(20年3月末現在)、保険業界で唯一「経営革新等支援機関」に認定されている。
 あいおいニッセイ同和損保
 「国内M&A向け表明保証保険」の販売に当たり、あいおいニッセイ同和損保は「買主用」はオーダーメードによる柔軟性を、「売主用」はレディーメードによる迅速性を重視し、マーケットニーズに応じた保険条件を設定している。「買主用」はM&Aの取引規模2億円以上が条件で、支払限度額3億円の場合の保険料900万円が例として示されている。また「売主用」はM&Aの取引規模5億円以下が条件で、支払限度額2億円の場合の保険料200万円が例として示されている。
 審査に当たっては、「買主用」は同社が指定する機関がこれに当たり、「売主用」は自社審査による。
 同社では、事業継承のサポートとして、M&A取引等に関与する人たちからの照会に対して広く応えられる態勢を構築し、本商品の活用によって中小企業を含め、事業継承を安心して行うことができる環境づくりをサポートする。また、本商品以外でも、事業継承、M&A、人事労務等、主に中堅・中小企業の事業者からの相談に対する「経営支援サービス」を提供していく。