2021.01.25 ■金融庁 自賠責審議会 基準料率6.7%引下げ決定、コロナで交通事故減少し収支改善[2020年1月13日]

 第142回自動車損害賠償責任保険審議会が1月13日、第143回同審議会が1月18日にオンラインで開催され、2021年度自賠責保険基準料率を平均6.7%引き下げることが承認された。新型コロナウイルスの影響などによる交通事故の減少などによって損害率が約110%となり、予定損害率よりも乖離(かいり)していることなどの検証結果から、自賠責保険の収入と支出が見合う料率水準とすることが適正との方向性が示された。本改定により、21年4月1日から、例えば、自家用乗用車(2年契約、沖縄県と離島は除く)の改定基準料率は2万10円となり1540円(改定率7.1%)、同じく軽自動車は1万9730円となり1410円(同6.7%)値下がりする。
 第142回審議会では、検証結果が示され、損害保険料率算出機構の江原茂専務理事が金融庁に提出した基準料率改定に関する答申案の概要を報告。改定の前提は、実施日が21年4月1日、収支均衡期間は21~25年度の5年間とした。また、基準料率改定の算出方法の①純保険料率(水準是正・滞留資金の活用)②社費(水準是正・累計社費収支残の償却)③代理店手数料④賦課金―の四点について説明した。
 第143回審議会においては、第142回審議会で示された方向性に沿って、損害保険料率算出機構から届け出のあった新たな基準料率に関して諮問が行われた。審議の結果、新たな基準料率を4月1日より適用することなどについて了承された。
 新たな基準料率は、全車種などの平均で6.7%の引き下げとなる。改定後の予定損害率は122.3%となる。
 車種別・保険期間別の改定基準料率(沖縄県を除く離島以外の地域)は、各2年契約で、自家用乗用車は現行基準料率2万1550円から改定後は2万10円となり、1540円下がる(改定率▲7.1%)。同じく軽自動車(検査対象車)は2万1140円から1万9730円となり、1410円下がる(同▲6.7%)。
 この他、小型二輪自動車は現行基準料率9680円から9270円となり、410円下がる(同▲4.2%)。同じく原動付自転車は8950円から8850円となり、100円下がる(同▲1.1%)。
 今回の料率改定に関連する損害率に関しては、20契約年度が110.3%で改定時の予定損害率(118.3%)との乖離が6.8%、同じく21契約年度が110.2%で乖離が6.9%とする検証結果が示された。料率検証の主な予測要因として、収入純保険料では、過年度の車両保有台数の動向を参考に算出した。車両保有台数は20年度が8906万台、21年度が8905万台でほぼ横ばいだった。
 支払保険金については、過年度の事故率の動向と交通事故発生状況を参考にして、20年度以降の死亡・後遺障害・傷害の事故率をそれぞれ減少傾向と予測した。平均支払保険金は、賃金上昇率は据え置き、治療費は減少傾向、支払基準改定による上昇率は増加傾向を見込んでいる。
 審議会は、検証結果と保険収支の状況について、交通事故の減少等により、損害率が約110%と前回の基準料率改定時よりも想定以上の黒字となっていることや、保険契約者への還元に活用される滞留資金の残高額などを踏まえた結果、今後の料率の在り方について、自賠責保険の収入と支出が見合う料率水準とすることが適正との判断を示した。
 この他、自賠責保険約款と自賠責共済約款の一部変更についても答申案が出され、基準料率改定とともに承認された。事故発生時に被保険者などが保険会社・共済組合に通知するべき事項について、自動運行装置の作動状況を第7条(事故の発生)(注)に明記する。また、被保険者や被共済者による保険金の請求があった場合に、自動運行装置の作動状況に応じて保険会社・共済組合が被保険者などに調査への協力を求めることがある旨を第14条(保険金の請求)(注)に明記する。
 損保協会自賠責保険特別委員会の川口信吾委員長は、料率改定により、契約者に対して混乱を生じさせないように自賠責保険取り扱い事業者間で連携を図り、2月1日をめどに新しい保険料による取り扱いを開始し、円滑に事務手続きを遂行するように努めるとした。
 (注)自賠責保険約款第7条1項のロと、同第14条2項。
 【審議会メンバー】▽会長:東京大学大学院法学政治学研究科教授藤田友敬氏▽委員:上智大学法学部教授甘利公人氏、弁護士大野澄子氏、全国共済農業協同組合連合会代表理事専務鹿嶋伸行氏、日本損害保険協会自賠責保険特別委員会委員長川口信吾氏、NPО法人いのちのミュージアム事務局京井和子氏、全日本自動車産業労働組合総連合会会長髙倉明氏、全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局長髙松伸幸氏、弁護士田島優子氏、明治大学商学部教授中林真理子氏、一般社団法人日本自動車会議所保険特別委員長浜島和利氏、弁護士細川昭子氏、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問唯根妙子氏▽特別委員:損害保険料率算出機構専務理事江原茂氏、全国遷延性意識障害者・家族の会代表桑山雄次氏、日本自動車連盟副会長坂口正芳氏、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授寺田一薫氏、公益社団法人日本医師会常任理事長島公之氏