2020.12.24 ■損保協会 定例会見、21年度税制改正要望の結果報告[2020年12月18日]

 損保協会は12月18日、業界紙向けの定例記者会見を行い、2021年度税制改正要望の結果を報告した。要望した全10項目のうち、「国際課税ルールの改定における対応」と「損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続」が実現、「破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置の恒久化」が部分的に実現した。一方、その他の7項目は見送られた。また、前日に日銀記者クラブで行われた広瀬伸一協会長の会見内容を報告した。
 21年度税制改正要望項目②の「国際課税ルールの改定における対応」では、「過大支払利子税制における保険負債利子の取扱いについて過度な事務負担とならないよう所要の手当てを行うこと」、同⑨の「損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続」では、「既に収入金額を課税標準(100%外形標準課税)としている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続すること」、同④の「破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置の恒久化」では、「契約者保護の観点から、破綻処理の一環である協定銀行制度が機能するよう、破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置を恒久化すること」を要望していた。
 12月10日に公表された与党税制改正大綱では、「国際課税ルールの改定における対応」について、対象外支払利子などの額に、①生命保険契約または損害保険契約に基づいて保険料積立金に繰り入れる予定利子の額②損害保険契約に基づいて払戻積立金に繰り入れる予定利子の額―の2点の金額を含めることになったことが報告された。
 「損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続」については、引き続き維持されることになった。ガス供給業を含め収入金額による外形標準課税は、地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響なども考慮しつつ、その課税のあり方について今後も引き続き検討するとされた。
[QQ]「破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置の恒久化」では、保険業法に規定する協定銀行が協定の定めにより、破綻保険会社などの資産の買取りにより取得した不動産において、不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
 この他に要望していた①火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実②国際課税ルールの改定における対応のうちの「国際課税ルールの見直しが行われる場合には、損害保険ビジネスの特性を踏まえ、正当な経済活動を阻害することがないよう、十分に留意」③損害保険に係る消費税制上の課題解決⑤確定拠出年金に係る税制上の措置⑥地震保険料控除制度の充実⑦完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止⑧受取配当等の二重課税の排除―の7項目は見送られた。
 日銀記者クラブでの広瀬協会長の会見内容報告では、新型コロナウイルス感染症への対応について、同協会が定める「新型コロナウイルス感染症に関する基本方針」に基づいて感染リスクが高まる場面などを新たに整理し、会員各社に対して感染防止を徹底するよう要請したことを説明した。
 ウィズコロナが常態化する中での自然災害対策については、本年度発生した九州地方豪雨では会員各社がインターネットによる事故受付や経過報告、保険金支払いなど、各種システムを活用した業務フローの構築を進めていると報告。
 同協会が推進する「業務の共通化・標準化の推進」とも合致する、政府の書面・押印・対面を原則とした制度や慣行を見直す方針に対しては、関係省庁との連携の上、積極的に対応する考えを示した。
 会見ではこの他、役員選任や北関東支部(埼玉県さいたま市)と南関東支部(東京都千代田区)の統合 、ミャンマーにおける自動車保険の改定に向けた取り組み、20年に発生した自然災害における保険金支払状況、激甚化・多発化する自然災害への対応力強化の取り組み、サイバーリスク保険の啓発活動などについて報告した。
 役員選任では、楽天損保の多田健太郎氏が12月31日付で辞任することを受け、12月18日に実施した臨時社員総会で21年1月1日付で大塚祐介代表取締役副社長を理事に選任することを決めたことを報告。
 支部の統合については、BCP対応力の向上や在宅勤務・リモートワークの推進に加えて、有事の際に北関東支部に参集しなくても対応できる可能性が高くなったとして、北関東支部、南関東支部の両支部の共通性・事業の実効性などの面から、北関東支部を閉鎖して南関東支部に統合すると発表した。
 ミャンマーにおける自動車保険の改定に向けた取り組みでは、11月4・6日にミャンマーの国内損保社員に向け自動車保険約款の改定内容に関する研修をオンラインで開催し、約400人が参加したことを説明した。また、同研修では、イラストを多用した改定自動車保険約款の約款解説書を作成し、自動車保険の基礎知識を含めて解説することでスキルアップに努めたとした。
 20年に発生した自然災害の保険金の支払状況は、九州での豪雨の支払保険金が約874億円、9月の台風10号の支払保険金が約853億円になったことを報告した。