2020.12.10 ■三井住友海上中国 中国大手損保、上海保険取引所と提携、国際貿易保険プラットフォーム開発[2020年]

 三井住友海上が100%出資する三井住友海上火災保険(中国)有限公司(以下、三井住友海上中国)は、中国の税関システムである国際貿易単一窓口(国際貿易に係るオンラインワンストップサービス)を運営する上海億通国際有限公司(以下、億通国際)および上海保険取引所(中国銀行保険監督管理委員会の管理下、保険業界のためのシステムインフラ開発等を行う組織)と提携し、「スマート国際貿易保険プラットフォーム」を開発、11月22日から運用を開始した。この提携には、中国の三大大手損害保険会社である中国人民財産保険、中国平安財産保険、中国太平洋財産保険も同時に参加している。
 「スマート国際貿易保険プラットフォーム」は、上海国際貿易単一窓口が持つ税関手続きデータをブロックチェーン技術で取得し、保険ユーザーが保険証券や保険料請求書等を自動的に発行できるようにするもの。開発者は、億通国際、上海保険取引所および三井住友海上中国となり、上海保険取引所が運営者となる。今回は、輸送中の損害を補償する外航貨物保険のみが対象で、今後は、貿易に関わる他の保険(生産物賠償責任保険、関税ボンド、輸出取引信用保険等)にも、対象を拡大する計画となっている。
 ブロックチェーン技術を使用することで高いセキュリティーを確保し、①税関データの利用による、簡単、正確かつ迅速な保険加入手続きを実現②保険の加入漏れの防止、未加入貿易企業への保険加入の促進③中国保険業界共通のプラットフォームの構築による保険利用者の利便性向上―といった効果が期待されている。上海保険取引所を通して中国の保険業界での利用を推進することで、業界全体の品質向上を図ることも目的としている。
 三井住友海上では、11月18日に今回のプラットフォームの運営や今後の新たなシステム開発事業を積極的に行うことを目的に、ITシステム開発やその他のサービスを行う100%出資の「MSIG管理(上海)有限公司」を中国上海市に設立、今後は他業界ともブロックチェーン技術で連携を行い、さらなる利便性の向上を目指していく。
 貿易プロセスには、荷主、物流業者、銀行、税関、保険会社等多くの事業者が参加し、その手続きのため、売買契約書、信用状、船荷証券、保険証券等、類似した多数の書類を作成している。その実務は個々に行われているため、多重の事務作業が発生し、効率的な情報共有が行われていないことが課題となっている。
 三井住友海上中国は、億通国際および上海保険取引所とともに、その解決策としてスマート国際貿易保険プラットフォームの開発に至った。上海市は「上海五大センター設立」(国際経済、貿易、金融、水運、世界イノベーション)の国家戦略の下で、世界の経済、貿易、金融の中心都市となることを目指し各施策を推進している。同社は、世界最大貿易港の上海で、市政府関連機関と連携しながら、ブロックチェーン技術により安全かつ効率的な貿易情報の共有を実現しこの世界的に大きな課題に挑戦することで、顧客の利便性の向上と中国保険業界の発展に貢献していくとしている。