2020.11.11 ■かんぽ生命 2020年度下半期資産運用方針説明会、慎重なリスクテイクを継続[2020年10月27日]

 かんぽ生命は10月27日、電話会議システムでプレス向けに「2020年度資産運用方針(下半期)説明会」を開催した。概要を説明した執行役運用企画部の春名貴之部長は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞は実体経済へ相当な悪影響を及ぼしたが、大規模な財政・金融政策を受けて緩やかな景気回復を見込むとした一方、20年度下半期の資産運用については、上半期と同様に慎重にリスクテイクを行っていく方針を示した。
 春名部長はまず、20年度の下半期の経済環境の見通しを解説した。
 新型コロナウイルス感染症の春先の感染拡大は、各国のロックダウンにより4月をピークに一時的に収束に向かったものの、夏以降再び各国で感染が拡大しており、収束に向けた動きは依然として不透明とした。経済活動の停滞による実体経済への悪影響は相当大きく、需要(消費・投資)と供給の両サイドから経済活動を下押しし、グローバルな景気後退を招いたが、大規模な財政・金融政策を受けて来年度は緩やかな景気回復を見込むとした。  金利の見通しについては、新型コロナウイルス感染症拡大に対応して、各国中銀が緩和的な政策スタンスに移行したことでグローバルに金利が低下し、今後も低金利環境が継続する見込みとした。株式は新型コロナウイルス感染症の拡大により株価が大幅に下落したが、その後は各国の迅速かつ大規模な財政・金融政策に後押しされ下落前の水準に戻しているとした。為替は春先はドルへの需要の高まりからドル高が進行したが、足元では狭いレンジ内で推移しているとした。11月の米大統領選の結果やその確定が遅れた場合は、為替・株式市場のボラティリティーが一時的に高まる場面もあるとした。
 21年3月末における市場環境については、国内金利(10年国債)は0.00%(レンジは▲0.2~0.2%)、海外金利(米10年国債)は0.68%(0.50~1.20%)、国内株式(日経平均)は2万3000円(1万9000~2万5000円)、海外株式(NYダウ)は2万8000ドル(2万4000~3万ドル)、為替はドル円が104円(100~110円)、ユーロ円が123円(115~130円)になるとの見通しをを示した。
 続いて、同社の現在の資産運用について解説。全体的な運用方針として、市場の先行きに対する不確実性が高まっているとの考えを示し、上半期以上に市場環境を注視して、慎重にリスクテイクを実施するとした。 
 具体的な資産ごとの残高の見込みと運用方針については、円金利資産は、引き続き資産と負債のマッチング(ALM運用)を意識しつつ金利リスクを削減する投資を行う方針だとし、「債券償還のため残高は減少の見込みだが、国内金利が上昇する局面においては追加投資するなど機動的に対応していく」とした。
 為替ヘッジ付外債は、内外金利水準やヘッジコストを踏まえ、運用収益向上の観点からスプレッド資産を中心に投資を行うとし、「こちらも債券償還のため残高は横ばいの見込みだ」と述べた。
 オープン外債と外国株式は、新型コロナウイルス感染症の第2波が懸念されるとして、慎重にリスクテイクを行う意向を示した。
 また、国内株式も慎重にリスクテイクを行い、調整局面では残高を積み増す考えを示した。
 オルタナティブは、直接投資のための態勢を強化しながら、中長期的に残高を積み増す方針だという。
 また、責任投資の取り組みに関しては、日本版スチュワードシップ・コードに係る方針を5月に改正し「目的をもった対話(エンゲージメント)」の対象を従来の株式から社債にまで広げたことや、上半期のエンゲージメントの実績として約50社と対話したことを報告した。その上で、下半期については、対話の内容として「ESGへの取り組みを考慮した中長期的な経営戦略」「サステナビリティー(企業がESGの要素を踏まえて、中長期的に持続的発展が可能か)」を挙げ、対話は合計15社程度を対象に行う予定で、与信規模に加え、起債の有無、信用力の動向、ESGへの取り組みを考慮して絞り込むとした。
 これまでのESG投融資の実績としては、20年9月末時点では、グリーンボンドやソーシャルボンド、サステナブル・ボンドなどの債券投資に約1900億円(直近では新型コロナウイルス対策を支援する約500億円のサステナブル・ボンドに投資)、再生可能エネルギー分野へのプロジェクトファイナンスに約400億円、ESG課題の解決に資する技術力や事業基盤などを有する企業を評価した株式投資に約3000億円を行っており、下半期もソーシャルボンドである東京大学債券を購入するなど積極的にESG投資を推進していく考えを示した。