2020.11.06 ■日本生命 2020年度下期運用方針説明会、機動的な配分調整実施[2020年10月26日]

 日本生命は10月26日、東京都千代田区の本社ビルで「2020年度下期運用方針説明会」を開催した。説明会では、執行役員財務企画部長の岡本慎一氏が20年度上期の運用実績と下期運用方針を説明した他、新型コロナ禍での運用面の取り組みについて報告した。20年度下期は、負債特性に留意しながら、比較優位に基づき機動的な配分調整を実施する他、新型コロナウイルスの感染拡大による社会構造変化を踏まえた投融資を全資産で実施する方針を示した。

 20年度上期の新型コロナ禍での運用面の取り組みについては、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけとした大きな相場変動を捉えた機動的な売買を行うことで、運用収益を確保しながら、生保会社として公共性を意識した取引先対応を実施していると報告した。

 具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業業績の悪化への懸念が高まり、クレジットスプレッドが一時的に大きく拡大し、海外長期金利が低位に推移した。また、国内の長期金利は景気対策に伴う国債の増発により上昇している。

 こうした環境を捉え、外国国債を中心としたヘッジ外債から通貨スワップを付けた外国社債を中心とした国内債券へ入替を行った。また、欧州復興基金の合意によってユーロ円が上昇したことから、ユーロ建を中心にオープン外債を売却したと説明した。

 この他にも、融資に関わる返済の相談受け付けや、休業を余儀なくされた飲食店舗などのテナント賃料の支払い猶予を実施しているとした。

 20年度上期末の一般勘定ポートフォリオの状況(速報値)は、全体の増加資産は簿価ベースでプラス8700億円程度になる見込みとした。各資産の状況については、円金利資産では一般貸付がコロナ感染拡大を受けた企業の資金需要に対応した機動的な融資を行い1000億円の増加、国内債券等が2兆3400億円の増加、ヘッジ外債が1兆3500億円の減少となった。

 一方で、円金利以外の運用資産では、国内株式等がコロナ禍を受け急速な産業構造の変化に着目した売買を行った結果、700億円の減少となった。オープン外債が3100億円の減少、外国株式等が1600億円、国内不動産が200億円でそれぞれ増加となった。その結果、20年度上半期末ポートフォリオは、円金利資産が約69%、円金利以外の資産が約29%となった。

 有価証券含み損益の状況、20年度の経済環境やマーケット環境の見通しに続いて、20年度下半期各資産の運用方針を説明。円金利資産の一般貸付は、引き続き企業の流動性ニーズに対応しながらスプレッド水準等に留意して機動的な貸付を実施するとし、横ばいの計画とした。

 国内債券等は、通貨スワップを使って円金利化した外国社債や円建社債で利回りを確保して、金利水準を勘案しながら一部国債への投資を行うとし、増加の計画とした。ヘッジ外債は、海外金利の緩やかな上昇を見込む中、外国国債を売却してスプレッド収益を獲得できる外国社債へ入替を行うとし、横ばいとした。

 一方、円金利以外の運用資産のオープン外債については、減少の計画とし、為替リスク量に留意しながら、為替・金利水準に応じて機動的に為替リスクをコントロールするとした。

 内外株式等は、分散投資の観点から外国株式(オルタナティブ含む)は増加し国内株式は微減とし、横ばいとした。国内不動産は、物件のリニューアルを中心に投資しつつ、新規優良物件の取得等にも柔軟に対応していくとし、横ばいの計画を示した。

 中計における資産運用戦略については、超低金利や相場の不確実性の高まりなど、厳しい運用環境が継続していくことから、リスク対応力の強化を図りながら、ESG投融資を含む成長・新規領域への投融資や不動産・インフラファンドへの投資を通じた分散投資によって、長期・安定的な利回り確保を目指す考えを示した。

 ESG投融資の強化方針については、インテグレーションやエンゲージメント、テーマ投融資、インパクト投資、ネガティブ・スクリーニングといった手法に取り組んでおり、ESGは、取引先企業の価値に直結する重要な要素であり、コロナ禍によって加速的に伸展しているとした。

 そのため、ESG投資は、中長期の資産運用における責任投資だけでなく、リスク低減やリターンの向上に直結する重要な投資ファクターになっているとの見解を示した。

 各手法の具体的な取り組みについて、エンゲージメントでは、対話先全件とESGに関する対話を実施している。また、株式だけでなく国内社債のスチュワードシップ活動を開始するなどステップアップを図っているとした。

 テーマ投融資では、17年4~20年9月の累計で約8500億円(速報値)を突破した。また、20年7月からインパクト投資を開始しており、今後も拡大していく考えを示した。

 インテグレーションについては、ESG投資を進めていく上で最も重要なアプローチと位置付けており、今後も注力していく考えを示した。21年4月からは、全資産の投融資プロセスにESGの観点を組み込む方向性を示した。

 同社は創業以来、公共性に配慮した運用を行い、国民の生活を支えてきたという観点から、ESG投融資は、同社の長期の投融資の基本となる安全性・収益性・公共性といった基本方針と同項と考えていることから、ESG投融資の強化を通じて、運用のリスク低減とリターン向上に努め契約者利益の拡大を目指す方針を示した。