2020.11.04 ■住友生命 2020年度下半期運用方針説明会、コロナ禍の影響は限定的[2020年10月23日]

 住友生命は10月23日、東京都中央区の同社東京本社ビルで、2020年度下半期の運用方針説明会を開催した。新型コロナウイルス感染拡大による影響については、金融市場は3月末にかけて大幅に悪化したものの、同社の保有する有価証券の評価損は限定的であり、含み損益についても足下ではコロナ禍以前の19年12月末の水準近くまで持ち直したと説明。また、クレジット資産についても年度末にかけてスプレッドが拡大し、含み損益が一時的に減少したものの、A格を中心とした投資適格銘柄を保有し、かつ、ダウンサイドリスクに強い銘柄を選定の上、分散投資することで、19年度末も含み益を維持し、引き続き良質なポートフォリオを維持していると報告した。
 説明会では、同社運用企画部の藤村俊雄部長が、上半期の資産運用の取り組みや、ポートフォリオ状況、下半期の運用方針、ESG投融資について説明した。
 同氏は上半期の取り組みについて、投資に当たっては、業種や個別企業への影響に十分留意しつつ、相場の下落リスクに備えて適宜ヘッジポジションを構築したと説明。 ALM運用ポートフォリオでは、慎重な銘柄選定と分散投資を徹底し、スプレッド拡大局面で外貨建クレジット資産へ投資を拡大。シメトラの運用子会社への委託も活用した。
 資産運用収益力の向上に向けては、長期的に高い収益が見込まれるインフラ・プライベートエクイティファンドについては長期的な投資の観点から銘柄選定を行いつつ、段階的にコミットメントを実施。
 リスクコントロールの強化に当たっては、低金利環境が継続するという見通しの下、国内金利の上昇局面を捉えて超長期債への投資を積極化し、国内金利リスクの削減を推進した。
 バランス運用ポートフォリオについては、春先の株式相場の調整局面で、中長期的に割安な水準と判断し、高成長・高配当銘柄への投資を実施。オープン外債については、為替と金利水準に留意しつつ、投資を行った。同時に、国内株式相場の下落と為替の円高に備え、ヘッジポジションを構築した。
 資産運用体制の強化については、従前の取り組みに加えて、ウィズコロナ・ポストコロナを見据え、既存業務の抜本的見直し、ITを活用したさらなる業務効率化、在宅勤務の推進策を検討しているとした。
 20年度9月末のポートフォリオの状況(速報値)の前年度末比簿価増減額については、公社債が1800億円増加、株式等が900億円増加、外国証券が6900億円増加で、そのうち公社債は4700億円増加、株式等は2200億円増加となった。企業貸付は200億円減少し、一般勘定資産計は、9600億円の増加となった。
 20年度9月末の有価証券含み損益の速報値は、有価証券が前年度末に比べて4600億円増加し、3兆9200億円となった。
 20年度下半期の資産運用方針については、景気は4月~6月をボトムに、21年度末ごろにはコロナ前のGDP水準に近づく想定ではあるものの、不透明感は強く、新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療薬の実用化の時期も流動的なため、感染拡大が長期化するリスクもあると指摘。
 さらに、米国大統領選挙や米中問題、Brexit等、下半期も変動の激しい相場となることも想定されるため、相場展開、業種や個別企業の状況を踏まえ、投資タイミングを見極めつつ資金配分等についても柔軟に対応していく方針を明らかにした。
 ESG投融資については、同社のSDGs達成に向けた取り組みの一つと位置付けて推進しており、上半期はESG投融資手法のレベルアップに取り組むとともに、責任投資(ESG投融資+スチュワードシップ活動)体制移行に向けた検討開始や新型コロナ対策等を推進した。目標達成に向けたテーマ投資にも取り組み、20年~22年度の実行額目標累計3000億円に対し、上半期実績が566億円(目安500億円)となったと報告した。
 下半期は、ESGの観点から同社資産ポートフォリオの分析を開始する予定で、エンゲージメントの強化に向けて、国内社債投資先との対話も開始する方針だ。