2020.10.14 ■生保8社 保険料控除証明・年調手続電子化に対応、「マイナポータル連携サービス」提供[2020年]

 平成30年度税制改正により令和2年(2020年)分の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除等の控除証明書を勤務先に電子データで提供できるようになった。この10月から国税庁のホームページで「年末調整控除申告書作成用ソフトウエア(年調ソフト)」の提供が開始され、複数の控除証明書等を一括で処理できる「マイナポータル連携」のサービスも生保会社8社が提供を開始した。
 これまでの年末調整手続は、①従業員が保険会社等から控除証明書等を書面(ハガキ等)で受領②従業員が保険料控除申告書等に①で受領した書面(ハガキ等)に記載された内容を転記の上、控除額を計算し記入③従業員が保険料控除申告書等、年末調整の際に作成する各種申告書を作成し、控除証明書等とともに勤務先に提出④勤務先が提出された年末調整申告書に記載された控除額の検算、控除証明書等の確認を行った上で年税額を計算―という流れだった。
 年末調整手続が電子化されると、①従業員が保険会社等から控除証明書等を電子データで受領②従業員が国税庁ホームページ等からダウンロードした「年調ソフト」(無償)に、住所・氏名等の基礎項目を入力し、①で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成③従業員が②の年末調整申告書データおよび①の控除証明書等データを勤務先に提供④勤務先が③で提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算―という手順になる。 
 年末調整手続の電子化によって、従業員は、▽これまでの手書きによる手続(年末調整申告書の記入、控除額の計算など)を省略でき、年末調整申告書の作成を簡素化できる▽書面で提供を受けた控除証明書等を紛失した場合は、保険会社等に再発行を依頼しなければならなかったが、その手間も不要となる―といったメリットがある。
 また、勤務先は、▽従業員が「年調ソフト」で作成した年末調整申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要▽控除証明書等データを利用した場合、添付書類等の確認に要する事務が削減される▽従業員が年末調整申告書作成用のソフトウエアを利用して控除申告書を作成するため、記載誤り等が減少し、従業員への問合せ事務も減少することが期待される▽書面による年末調整の場合の書類保管コストも削減することができる―といったメリットがある。
 さらに、この10月から、朝日生命、アフラック、住友生命、第一生命、大同生命、太陽生命、日本生命、明治安田生命の8社は、国税庁によるマイナポータル(内閣府が運営するマイナンバーカードを利用した個人向けオンラインサービス)を活用した年末調整および所得税確定申告の簡便化に対応、「マイナポータル連携サービス」の提供を開始した。
 「マイナポータル連携サービス」は、マイナポータルを利用して保険会社等が契約者に保険料控除証明書(電子的控除証明書)を電子交付するもので、契約者は、複数の控除証明書等を一度の処理で取得でき、各種申告書への自動入力が可能となるので利便性がより高まることになる。
 なお、今回の「マイナポータル連携サービス」では、電子的控除証明書の交付について、㈱野村総合研究所(以下、NRI)が提供する民間送達サービス「e―私書箱(イー・シショバコ)」を利用する。NRIのe―私書箱は、マイナポータルと民間企業をつなぐ民間送達サービスで、民間企業がe―私書箱と認証連携を行うことで、金融機関の取引報告書、保険料控除証明書、クレジットカードの支払明細書、携帯電話利用料や公共料金の領収明細書、企業の給与明細書など、厳格に個人を特定して送るべき情報を届けることを可能としている。
 「マイナポータル連携サービス」の利用方法、利用開始時期は各生保会社のホームページで案内されることになっている。