2020.08.11 ■AIG損保 独自の新型コロナ特別措置、売上高の2年通算確定方式導入[2020年]

 AIG損保は6月から、独自の新型コロナ特別措置として中小企業向け商品の業務災害総合保険や事業総合賠償責任保険などで「保険料算出基礎(売上高)の2年通算確定方式」を導入した。通常は前年の売上高を基に本年度の保険料を算出するが、前年と今年の売上高を部分的に調整して、本年度と翌年度の保険料算出基礎に振り分ける。2年間の保険料総額は変わらないが本年度の保険料負担を減らすことができる。単なる保険料支払い猶予とは異なる同社のスキームに注目が集まりそうだ。

 2年通算確定方式の対象となるのは、「業務災害総合保険(ハイパー任意労災)」「事業総合賠償責任保険(STARs)」「総合事業者保険(スマートプロテクト)」「個人情報漏洩保険」の4商品。2020年6月1日~9月30日を申込日とする更改契約で、原則として直近1年間の売上高が1億円以上、直近の単月(3月~8月の任意の月)で30%以上売り上げが減少している企業の契約が対象となる。
 これらの商品では、前年売上高を算出の基礎にした確定保険料方式を採用しており、本来であれば本年度の契約の継続に当たっては、新型コロナウイルスの影響をほとんど受けていない19年度の売上高をベースに保険料を算出する。今回の2年通算確定方式では、19年度の売上高の半分と、今年3月~8月までの半年分の売上高および売上高見込みの合算を20年度の保険料の算出基礎とすることで保険料負担を低減できる。21年度の保険料では、20年度の売上高に19年度の残りを上乗せして算出する。
 例えば、19年度の売上高が12億円、今年3月~8月までの売上高および売上高見込みの合計が4億円の企業で20年度の最終売上高が8億円だったとすると、本年度は、19年度の売上高の半分の6億円と3月~8月の売上高4億円を足した10億円を保険料算出の基礎とする。翌21年度の保険料では、20年度の最終売上高8億円に19年度の残りの売上高2億円を加算した10億円を算出の基礎とすることで、2年合算の保険料算出基礎は同じになる(図)。
 同社では、新型コロナウイルスの感染拡大が広がった4月の緊急事態宣言後から新たなスキームの検討を開始し、6月半ばに自社商品の認可範囲内で導入。条件に該当する契約者にオプションとして案内し、希望する場合に適用している。保険料のボリュームが比較的大きく、前年度対比で3~4割程度売り上げが減少している企業からの引き合いが多いという。
 損保業界では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、契約に関する特別な取り扱いとして継続契約の締結手続きや保険料払い込みの猶予を実施しているが(現時点で今年9月30日まで)、新スキームを推進した同社傷害医療保険部商品業務課の岩岡伸樹課長は、今回の事態は1年という期間で解決することは難しいと指摘。「該当商品は月払契約が多く、お客さまからは9月まで猶予されても支払うべき保険料が積み重なるだけ、といった意見も多く聞かれる。2年通算確定方式であれば、保険料の一部を来年までは先送りして売り上げ減少に苦しむお客さまの負担を軽減することができる一方、商品としての公平性も担保できると考えている」と話す。 
 ただし、今回の特別措置は、今秋には事態がある程度収束して景気も回復していくとの予測を基に設計している。先行きの見えない現在の環境では、10月以降の制度延長を含めた検討が必要になる。同じく新スキームの設計に携わった企業賠償保険部の山口庸郎部長(SMEセグメント)は、「現在は宿泊業や飲食業などのダメージが大きいが、今後は製造業などへも影響が広がっていくとの予測が出ている。さまざまな業種の企業から2年通算確定方式に対する需要が高まると考えており、10月以降の方向性についても検討していきたい」としている。