2020.07.28 ■第221回航空保険プール委員会 19年度提供保険料は138億円[2020年7月15日]
日本航空保険プールは7月15日、第221回航空保険プール委員会を開催し、一般概況報告とともに2019年度プール運営費決算報告など各議題を審議・承認した。プール委員会は新型コロナウイルス感染の影響を考慮し書面開催となった。19会計年度のプール提供(グロス)保険料は、前年度の約96億円から約42億円増加し、約138億円(前年比143・6%)となった。また、委員長および副委員長選挙の結果として、委員長に後藤浩之氏(東京海上日動常務執行役員)、副委員長に大知久一氏(三井住友海上取締役専務執行役員)が選出されたことが報告された。
同プール委員会では国際マーケットの動向として、以下の報告が行われた。
エアライン分野では、01年の米国同時多発テロの影響で急激にハード化した機体・賠償責任保険の料率水準は、その後、09年に発生したエールフランス機の大口事故直後の一時的なハード化という一部例外を除き、航空機の安全性向上も追い風となり、一貫してソフト化傾向が継続してきたが、17年第3四半期の大西洋ハリケーンをはじめとした一連の大口自然災害で、再保険マーケット全体が徐々にハード化に転じる動きを見せた。加えて、航空保険市場では、18年のBritの撤退がマーケットのその後の動向に大きな影響を与えた。
さらに、18年10月に発生したライオン・エア610便墜落事故(死亡乗員・乗客数189人)、19年3月に発生したエチオピア航空302便墜落事故(死亡乗員・乗客数157人)で、エアラインとGAを中心に保険料率が顕著に上昇する局面に移っていった。
19年のエアラインの死亡事故件数は8件(ジェット機4件、ターボプロップ機4件)であり、死亡乗員・乗客数は240人であった(前述のエチオピア航空事故を含む)。
また、全世界に拡大している新型コロナウイルス感染症の影響で、各地の移動制限が長引いており、20年4月のIATA(国際航空運送協会)の発表によると、20年の旅客収入見込みは前年対比55%減となっている。運航再開後も航行中のソーシャルディスタンスを保つことが義務化されることが検討されており、V字回復となる公算は低い状況とのこと。
宇宙保険マーケットは、19年暦年ベースで主要ロケットによる打ち上げ回数が前年の21回に比べ29回と増加したこと、および7月の大口事故をきっかけにマーケットがハード化に転じたことから、保険料は昨年同水準となった。一方、事故は、Falcon-Eye1、Chinasat18、Eutelsat5WB 等を含む計4件の大きな事故が発生し、マーケット全体の収支は、支払保険金が収入保険料を大きく上回り赤字となった。