2020.07.08 ■鹿児島・熊本で大雨災害 生・損保各社で特別措置開始、各社コロナ下で損調体制構築へ[2020年7月4日]

 財務省九州財務局は7月4日、「令和2年7月3日からの大雨による災害に対する金融上の措置について」を発出、災害救助法が適用された熊本県内および鹿児島県内の被災者に対する金融上の措置を各金融機関に要請した。国土交通省は対象地域の自動車検査証の有効期間を7月20日まで伸長し、自賠責の継続契約の締結手続を猶予する措置を実施。生保協会、損保協会、少額短期保険協会では、災害救助法が適用された地域で契約者が被害を受けた場合の特別措置を告示、各社も契約者向けに告知を開始した。

 九州財務局の要請のうち保険関係では、①保険証券、届出印鑑等を紛失した保険契約者等については、申し出の保険契約内容が確認できれば、保険金等の請求案内を行うなど可能な限りの便宜措置を講ずること②生命保険金又は損害保険金の支払いについては、できる限り迅速に行うよう配慮すること③生命保険料又は損害保険料の払込については、契約者の被災の状況に応じて猶予期間の延長を行う等適宜の措置を講ずること④①~③にかかる措置について実施店舗にて店頭掲示等を行うとともに、可能な限り保険契約者等に対し広く周知するよう努めること⑤窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等を行う営業店舗名等を、速やかにポスターの店舗掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、顧客に周知徹底すること―が要請された。
 生保協会では4日、契約者からの申し出により、保険料の払込猶予期間を最長6カ月延長すること、同じく保険金・給付金、契約者貸付金の支払いで必要書類を一部省略する等で簡易迅速な取扱いをすることを告示、同日損保協会も損保各社が各種損害保険(自賠責保険を除く)について継続契約の手続きや保険料の支払い猶予の取り扱いをする場合について案内を始めた。
 損保各社の損害調査対応は以下の通り(7月6~7日取材ベース)。
 三井住友海上では、災害対策室を100人規模で福岡市に立ち上げ、立会拠点を熊本に設置。建物被害を把握するためにドローン、AIによる損害査定を開始している(立会調査も併用。立会時はコロナに留意するため、マスク着用、消毒を徹底している)。事故受付件数が増加してきた場合、バックアップ機能を利用するとしている(受付件数は通常5000件だが、バックアップにより5万5000件可能となる)。車両損害については2018年から開始したビデオチャットを活用していく。
 あいおいニッセイ同和損保は、事故受付・保険金支払の支援対応で、火災保険については災害対策バックアップセンター(東京都渋谷区:約40人)、自動車保険については、あんしん24損害サービス部車両集中第1SC(東京都渋谷区:約60人)が対応する。立会拠点は、火災保険が熊本火災新種サービスセンター(熊本県熊本市、アジャスター・鑑定人20人を派遣)、自動車保険が熊本支店ビル(熊本県熊本市、アジャスター・鑑定人20人を派遣)。
 損害保険鑑定人が自らドローンを操縦することで効率的な損害調査を行うことやスマートフォンを活用した「視界共有システム」で遠隔地の修理工場とリアルタイムで修理内容の打合せ・決定を行い、迅速な保険金支払いなどへとつなげる、などの対応を行う。
 東京海上日動では、新型コロナウイルスの感染対策を踏まえ損害サービス態勢の構築を進めており、熊本に災害対策室、八代に立会を中心に行う拠点(サテライトオフィス)を設置し対応を進めている。被災地での業務に加え、被災現地でなくとも業務を行うことができるマルチロケーション対応等によって、迅速な保険金支払いの体制を整えていく。被害を受けた顧客からの連絡は、電話(東京海上日動安心110番)での受付に加えて、ウェブでの受付も行っている。現在は、自動車の事故を中心に報告を受付ているとのこと。同社では、迅速な支払いに向けて人工衛星画像を活用し水災の被害範囲や浸水高を把握し適切な損害サービス態勢を整備する取り組みや、遠隔で損害状況を確認できるシステム(Web―RTC:現場にいる顧客と遠隔地にいる事故担当者を専用システムでリアルタイムにつなぎ、オフィスから損害状況を確認するもの)も実際に活用していくとしている。
 損保ジャパンでは、火災保険については、水害の実調を行う短期集中型の災害対策本部を熊本に設置し、鑑定人による調査を7月6日から開始した。自動車保険については、コロナウイルス感染拡大防止の観点から、被災地に全国から社員を派遣せず、首都圏を除く北海道、東北、北陸、甲信越、中国、四国、九州に分散して支払対応を行う体制を確立。車両の水没事故による損害調査については同社独自アプリ「QuickCAM(クイックカム)」(顧客や代理店等がスマホで撮影した損害車両の画像を取得し、そのデータを被災地以外の拠点に送信することで、早期に、大量の損害確認を可能とするもの)を導入し、使用していく予定。また、災害が発生した7月4日当日に、個人用火災総合保険(水災担保)の顧客でLINEアプリをインストールしている約5000人の顧客に、迅速な保険金支払いのため通知メッセージを配信している。