2020.04.03 ■第一生命 確定給付企業年金向け新商品、「特別勘定第2特約」を発売[2020年]

 第一生命は、確定給付企業年金向けの新商品「特別勘定第2特約」を開発し、4月から取り扱いを開始した。同社が高度化してきたALM(Asset Liability Management、資産と負債の統合管理)運用のノウハウを企業年金に活用し、顧客ごとにカスタマイズして提供する。

 企業会計上の債務(退職給付債務)と資産の差額であるサープラスは金利変動によって増減し、企業の財務に影響を与えるが、新商品「特別勘定第2特約」では、このサープラスの変動リスクを抑制するため、LDI(Liability Driven Investment)運用を導入、新たに金利スワップやスワップション等の金融派生商品を活用し、債券や株式等の現物資産では対応できない効率的なリスクヘッジを可能とする。また、同社の年金アクチュアリーが企業ごとに異なる負債の構造をキャッシュフローベースで分析し、顧客の年金制度や運用目標に応じてカスタマイズしたソリューションを提供する。
 このように、企業ごとの負債構造を分析した上で、金利スワップやスワップション等を活用してサープラス変動リスクを抑制する企業年金特別勘定特約商品は生保業界初となる(3月6日現在、生保各社の公表情報等に基づく同社調べ)。
 投資方針として、企業会計と年金財政の両面を考慮しつつ、市場環境に応じた資産配分を行う。企業会計では、金利変動を考慮しつつ、サープラスの変動抑制を図る。年金財政では、目標収益率の達成を目指しつつ、資産運用リスク(ボラティリティ)をコントロールすることで安定的な収益獲得を図る。
 LDI運用の導入によって期待できる効果としては、ポートフォリオのリスク・リターン特性を改善すると同時に、時価評価の会計基準に対応する運用政策としても有効となるという。
 実施に当たって整備が必要となる、①負債キャッシュフローの認識②負債キャッシュフローに合った資産の組成③デリバティブ取引の体制構築―等については第一生命が対応する。
 金利スワップやスワップションは、少額の資金(CSA契約に基づく担保分)で債券と同等の金利変動リスクのヘッジ効果を享受することができる。また金利スワップは流動性が高く、任意の満期で取引することができる。こうしたことでヘッジコストを抑制すれば、収益獲得に必要な資金を確保することができ、目標収益率を達成するための過度なリスクテイクが不要となるという利点がある。同社では、顧客の財政状況および市場環境に応じて、想定元本やスワップションの権利行使レート等を適切にコントロールすることで、低金利環境を含むさまざまな状況に対応したヘッジ戦略を構築するとしている。
 KPMGのレポートによると、英国での2016年のLDI戦略による負債ヘッジの額面残高は約9080億ポンドであり、海外での市場規模は拡大傾向にある。
 生命保険会社と企業年金の運用は、超長期かつ固定の予定利率に基づいた期待収益が求められる点などで、互いに共通の性質を持っており、同社では今後もグループ各社とともに顧客の多様なニーズに応える魅力的な商品の提供に努めていくとしている。