2020.03.30 ■国内生保の新型コロナウイルス対応 従業員と顧客の健康が最優先[2020年]

 世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中、保険会社各社では、給付金支払いの迅速化や契約者貸付の特別取り扱い等を行っているが、各社の社内においてもBCPに基づいた施策が進められている。本紙では営業職員チャネルを持つ国内生保会社を中心にアンケート調査を行い、3月25日までに回答のあった7社の対応をまとめた。各社の回答からは、従業員と顧客の健康を最優先に営業活動が進められている様子がうかがわれる。

社内での対策
 各社とも、1月下旬から、対策本部の立ち上げや、手洗い・うがいの励行、消毒液・マスクの配布、通勤・勤務時のマスク着用の徹底、体調不良時の休暇取得推奨といった施策に取り組んできた。加えて、出勤前の検温を実施しているケースも多くみられる。
 小学校や保育園・幼稚園の休校に伴い、子どもや孫の養育が必要になった場合に特別休暇・防疫休暇を付与する会社も複数あった。
 公共交通機関の混雑を避ける目的で、時差出勤の導入も進んでおり、日本生命では午前7時から11時の間での出勤を推奨する柔軟な体制を取っている。
 また、テレワークを活用する企業も多い。明治安田生命では契約社員を含む約8000人を対象に実施しており、ポケットWi‐Fi約3400個を配布している。
 第一生命では、平時からオリンピック・パラリンピック対応を含めた在宅勤務・時差出勤を推奨していたが、新型コロナウイルスの拡大を踏まえ、あらためて積極活用を社内に呼び掛けているという。
 会議や社内研修についても、大人数での実施は避け、必要最低限の開催にとどめる対応が各社で取られている。
 あわせて、明治安田生命や住友生命、富国生命ではテレビ会議システムや双方向通信の活用も推奨している。
 3月以降も予断を許さない状況にあるとの判断から、合同での入社式を中止する動きも広がっている。時節柄増える歓送迎会等、飲食を伴う会合の自粛も進み、不急不要の出張についても、国内外を問わず、軒並み禁止措置が取られている。
 また、業務継続に向けて濃厚接触者の極小化を図るため、朝日生命では濃厚接触者の定義を明確化した他、食堂利用の分散化や、同一業務担当者・キーパーソン同士の飲食自粛、席替えなどを実施している。

社外・顧客対応
 外部との会合やセミナーについても各社ともに自粛を表明している。第一生命では、社外の顧客を招くイベント等は原則中止としており、2月下旬に開催予定だった学生向け大型自社イベントは、中止したうえでウエブ配信に切り替えて対応したという。
 日本生命も2月24日に予定されていた1000人規模の「インターンシップ」や2月29日から3月1日開催予定の「みんなの全国キャラバン」を中止した。
 顧客に接する営業職員の活動についても、多くの会社で顧客訪問時のアポイントとマスク着用を徹底している。
 また、朝日生命では対面手続きを望まない顧客への柔軟な郵送対応、富国生命では新規契約申込みの書面での取り扱いといった対応も進めている。
 3月25日夜には東京都が緊急記者会見を開き、小池百合子都知事が感染爆発に対する強い危機感を示すなど、事態は深刻さを増している。
 「従業員の感染防止と『いつ感染者が出てもおかしくない』との前提に立った濃厚接触者の極小化に向けた各種対策を講じ、保険金のお支払い等の重要業務を確実に継続していけるよう最大限努める」(朝日生命)、「対策本部としてさまざまな対策を講じているが、職員各自の手洗いの徹底等が不可欠。『人命最優先で、感染者が増えるような事業活動は行わないことを第一義に考えなければならない』というメッセージを社内で発信している」(富国生命)といった現場の責任者の言葉には、各社の施策に対する真摯(しんし)な姿勢が垣間見える。
 今も各社では、継続的で実効性の高い対策に向けた模索が続いている。