2020.01.27 ■金融庁 第141回自賠責保険審議会、料率平均16.4%引き下げ[2020年1月22日]

 第141回自動車損害賠償責任保険審議会が1月22日、金融庁で開催され、2020年度自賠責保険基準料率を平均16・4%引き下げることが承認された。交通事故の減少などによって、損害率が約92%となり、予定損害率よりも乖離(かいり)していることや滞留資金の残高が増加傾向にあるなどの検証結果から、自賠責保険の収入と支出が見合う料率水準とすることが適正との方向性が示された。本改定により、20年4月1日から、自家用乗用車(2年契約、沖縄県と離島は除く)の改定基準料率が2万1550円となり4280円(改定率16・6%)、同じく軽自動車が2万1140円となり3930円(15・7%)値下がりする。

 審議会では、損害保険料率算出機構の江原茂専務理事が、金融庁に提出した基準料率改定に関する答申案の概要について報告。改定の前提は、実施日が20年4月1日、収支均衡期間は20~24年度の5年間とした。また、基準料率改定の算出方法の①純保険料率(水準是正・滞留資金の活用)②社費(水準是正・累計社費収支残の償却)③代理店手数料④賦課金ーの四点について説明した。
 それぞれの項目に、該当する数値を当てはめて計算した結果、基準料率は、平均16・4%の引き下げが可能になるとした。改定後の予定損害率は118・3%となる。
 車種別・保険期間別の改定基準料率(沖縄県を除く離島以外の地域)は、各2年契約で、自家用乗用車が現行基準料率2万5830円から改定後は、2万1550円となり4280円値下がる(改定率▲16・6%)。同じく軽自動車(検査対象車)は、2万5070円から2万1140円となり3930円値下がりとなる(▲15・7%)。
 この他、小型二輪自動車が現行基準料率1万1520円から改定後は、9680円となり1840円値下がる(改定率▲16%)。同じく原動付自転車が9950円から8950円となり1000円値下がりとなる(▲10・1%)。
 今回の料率改定に関連する損害率については、19契約年度が92・5%で改定時の予定損害率(105・9%)との乖離が12・7%、同じく20契約年度が91・5%で、乖離が13・6%とする検証結果が示された。
 料率検証の主な予測要因として、収入純保険料では、過年度の車両保有台数の動向を参考に算出した。車両保有台数は、19年度が8929万台、20年度が8933万台でほぼ横ばいとした。
 支払保険金については、過年度の事故率の動向と交通事故発生状況を参考にして、20年度以降の死亡・後遺障害・傷害の事故率をそれぞれ減少傾向と予測した。平均支払保険金は、賃金上昇率は増加傾向、治療費は減少傾向、支払基準改定による上昇率は増加傾向を見込んでいる。
 審議会は、検証結果と保険収支の状況について、交通事故の減少等により、損害率が約92%と前回の基準料率改定時よりも想定以上の黒字となっていることや、保険契約者への還元に活用される滞留資金の残高が増加傾向にあることを踏まえた結果、今後の料率の在り方について、自賠責保険の収入と支出が見合う料率水準とすることが適正との方向性を示した。
 この他、料率改定を4月1日から実施するための適合性審査期間(90日間)の短縮や、各自賠責共済掛金を損保会社と同一に変更することによる規定の一部変更についても答申案が出され、基準料率改定とともに承認された。
 損保協会の緒方由貴夫自賠責保険特別委員会委員長は、料率改定によって、契約者に対して混乱を生じさせないように自賠責保険取り扱い事業者間で連携を図り、2月1日をめどに新しい保険料による取り扱いを開始し、円滑に事務手続きを遂行するように努めるとした。
 【審議会メンバー】▽会長:東京大学大学院法学政治学研究科教授藤田友敬氏▽委員:上智大学法学部教授甘利公人氏、弁護士大野澄子氏、日本損害保険協会自賠責保険特別委員会委員長緒方由貴夫氏、全日本自動車産業労働組合総連合会会長髙倉明氏、全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局長髙松伸幸氏、弁護士田島優子氏、明治大学商学部教授中林真理子氏、一般社団法人日本自動車会議所保険特別委員長浜島和利氏、弁護士細川昭子氏、全国共済農業協同組合連合会代表理事専務村山美彦氏、NPО法人いのちのミュージアム事務局山根和子氏、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問唯根妙子氏▽特別委員:損害保険料率算出機構専務理事江原茂氏、全国遷延性意識障害者・家族の会代表桑山雄次氏、日本自動車連盟副会長坂口正芳氏、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授寺田一薫氏、公益社団法人日本医師会常任理事長島公之氏