2019.12.18 生保協会 “顧客本位の業務運営”アンケート結果報告、各社の高度化取組みを後押し

 生保協会では今事務年度、会員各社の顧客本位の業務運営の徹底を所信取り組みの柱として掲げているが、各社の顧客本位の業務運営に向けた体制や取り組みについて、アンケートで情報収集を行った結果から得られた気づき等を取りまとめ、13日公表した。「『顧客本位の業務運営の高度化に資する取組みに関するアンケート』に関する報告」で、これにより会員各社の顧客本位の業務運営の高度化の後押しを図る。アンケートの対象は会員42社全社で、主な項目は、「お客さまニーズに沿った募集を徹底するための取組み」「契約後のお客さまへのアフターフォロー体制」「募集人の質を向上するための工夫」「苦情管理や内部通報制度等」の4点。

 「お客さまニーズに沿った募集を徹底するための取組み」については、各社、意向把握や意向確認等の保険業法に規定される必須のプロセスを踏まえた対応を当然のこととして実施しているが、一方で、消費者団体等から「契約内容を十分に理解しないままに意向確認書に署名をしている」といった指摘もあり、複層的な募集プロセスの整備が重要、としている。
 高齢者に対する募集に関しては、すべての社で、生保協会の「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」を順守した募集体制を整備しているが、一方で、消費者団体等から「高齢者への募集ルールは実施されているものの、実効性に課題を感じる」といった指摘もあり、引き続き改善が重要と指摘。
 外貨建保険に関しては、取り扱いのあるすべての社で、投資経験や保有資産、加入目的等の顧客属性やニーズを確認した上で募集を実施しているものの、消費者団体等からは「為替リスクについて十分理解がなされていない」「保有資産や年収に対して過大な契約となっている」「相続対策の提案を行う中で、受け取る金額が為替によって変動することが適切に認識されていない」といった指摘もある、としている。
 「契約後のお客さまへのアフターフォロー体制」については、営業職員によるアフターフォローについては、多くの社が訪問や電話により、顧客と定期的に直接の接点を持つことをルール化している一方で、代理店は、営業職員チャネルと比較するとルール化までしている社は少ないとされ、消費者団体等からは「生命保険は長期契約であるにもかかわらず、アフターフォローが実施されていないことで、契約当時の記憶が曖昧となっている」といった指摘もあり、引き続きアフターフォローの強化が重要、としている。
 また、顧客のライフステージの変化等に伴う、既契約・特約の保障内容の見直し提案に関しては、多くの社が契約転換制度や条件付解約制度等の制度を整備していることが確認された。
 「募集人の質を向上するための工夫」については、営業職員チャネルにおける募集人教育については、経営理念、商品、事務手続き、税務・社会保障、マナー・ コンプライアンス等に関して、冊子、映像、eラーニング等のさまざまな媒体を活用して教育を実施し、多くの社が教育内容の定着を確認するためのテスト等を実施している。営業職員チャネルにおける募集人評価に関しては、多くの社が新契約の実績だけではなく、契約の継続性やアフターフォロー取り組みも評価対象としている。しかし、消費者団体等からは「十分理解できていないのに、契約を勧められた」といった事例も依然として指摘がなされている。
 代理店チャネルの募集人教育に関しては、さまざまな媒体を活用して実施しているものの、営業職員チャネルと比較すると、教育内容の定着を確認するためのテスト等については、受験を必須としている社は半数以下で、消費者団体等から「保険会社は代理店に対する教育により関与すべき」といった指摘もあるとしている。
 保険会社による代理店評価に関しては、多くの社で、契約の継続性、募集体制、代理店点検結果、アフターフォロー、資格取得状況等、複数の品質評価基準が設けられている一方で、品質評価のウエートは10%未満の会社から90%以上の会社までまちまちだった。
 「苦情管理体制・内部通報制度等」については、各社ともに苦情を一元的に集約する仕組み、定期的な苦情分析、経営層への報告等の苦情管理体制を整備し、さらに、多くの社が能動的に社外の声を取り入れる仕組みを整備している。各社とも、不適切事象の拡大を未然に防止する仕組みとして内部通報制度を整備、多くの社で、社内・社外の双方の窓口を設置している。
 今回の報告では、以上の他、会員各社の顧客本位の業務運営の高度化に向けた取り組みの好事例も紹介された。
 生保協会では、「顧客本位の業務運営に向けた体制整備に関しては、会員各社が自社の状況を踏まえた上で、さまざまな取り組みを行っている。ただし、顧客本位の業務運営は、一つ一つの制度やルールに依拠するものではなく、それぞれの制度やルールが有機的に結び付き、補完し合って、全体として機能するもの。また、取扱商品や販売チャネル特性等、ビジネスモデルも踏まえた運用がなされてこそ、効力を発揮する。顧客本位の業務運営にゴールはなく、常に現状を改善していく不断の取り組みだ。会員各社においては、本報告書も参考にしつつ、顧客本位の業務運営の高度化に努めてほしい」としている。また、今後については、従来の取り組みに加え、生保協会に寄せられる顧客の声・苦情情報等の把握・分析機能の強化や、各社経営へのフィードバック機能の強化に取り組むことで、会員各社の顧客本位の業務運営の高度化を後押ししていきたいとしている。