2019.10.23 日火連 地震補償特約を来年から発売 住宅・事業物件を最大1000万円補償

全日本火災共済協同組合連合会(日火連)は2020年1月に、中小企業を対象に「地震危険補償特約」を発売する。既存の火災共済に付帯する商品で、地震などによる火災や損壊によって住宅や店舗などの生活用・事業用建物が損害を被った場合に最大1000万円まで共済金を支払う。地方自治体が発行するり災証明書の被害認定区分に基づいて共済金を支払うことなどにより、リーズナブルな掛金水準を実現している。中小企業による防災・減災の取り組みを国が促進する中、事業活動の継続に役立つ同商品に注目が集まりそうだ。

 「地震危険補償特約」は、地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する特約で、新耐震基準である新年代(1981年6月以降に建築)の専用住宅物件、普通物件(併用住宅、事務所等)、工場物件の建物を対象とする。契約期間は原則1年で、長期契約として2年~5年まで契約できるが、主契約である火災共済の共済期間と一致させる。
 共済金額は、1000万円を限度に、火災共済の共済金額の30%~50%の範囲内で契約する。共済金は、市町村など地方自治体が交付するり災証明書の被害認定区分に基づき、「全壊」なら共済金額の100%、「大規模半壊」だと60%、「半壊」では30%が支払われる。
 動産を補償の対象外にしていることや、「一部損」では共済金を支払わないこと、また、損害査定にり災証明書を活用することで、同商品は地震保険に比べてリーズナブルな掛金水準を実現している。東京都・大阪府・福岡県の住宅物件(イ構造:耐火構造)に共済金1000万円を年払いで契約した場合、掛金はそれぞれ1万8000円、9100円、5100円となり、家計地震保険(新築年割引適用)の保険料を2割ほど下回る。また、ロ構造(非耐火構造)でも、掛金はそれぞれ2万8000円、1万6100円、8400円で、地震保険よりも加入しやすい水準となっている。
 2011年の東日本大震災を筆頭に、近年、地域社会や地場産業に大打撃を与える震災が多発しており、今後も大規模地震の発生が予測されている。国でも、地域住民の防災・減災のみならず、地方の中小企業や小規模事業者が災害時に事業活動を継続していくための取り組みを促進しており、7月16日に施行された中小企業強靭化法では、「事業継続力強化計画」認定制度といった施策を推進する他、中小企業・小規模事業者のリスクファイナンス対策として、共済・保険事業者などに対して地震等の自然災害対策への補償提供を求めている。
 日火連としても、16年度に実施した全国の組合員へのアンケート結果において、地震補償に対する需要の高まりを確認する一方、中小企業庁が主催する「中小企業強靭化対策シンポジウム」に、大手損保や都道府県組合と共に出展を行い、中小企業の事業継続力の強化を支援しており、こうした組合員のニーズや国の動きを受けて、今回、地震危険補償特約を開発した。
 今後は、多くの中小企業が所属する商工会、商工会議所、中小企業団体中央会の商工三団体などと連携し、募集ツールの提供、商品説明会、査定研修会などを行いながら各都道府県で推進していく。発売5年後には、既存の火災共済契約のうち、新特約の対象物件で加入する契約の25%~30%程度の販売を目指していくという。
 日火連では、「今回の新特約は、中小企業強靭化法を含め国が進めている防災・減災の取り組みを支援できる一つの武器と考えており、積極的に販売推進していくとともに、今後も中小企業の皆さまのニーズにしっかりと応えていきたい」として、新商品の普及に意欲を示している。