2019.10.18 台風19号、各地で甚大な被害 各社で被災者対応、調査体制構築 生・損保協会、災害対策本部設置

 令和元年台風第19号は10月12日午後7時前に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した後、関東地方を通過し、13日未明に東北地方の東海上に抜けたが、静岡県や新潟県や関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。広範囲にわたる河川の氾濫等により各地に甚大な被害が発生、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県の13都県に災害救助法が適用された。16日午後2時30分現在の消防庁情報によると全国で人的被害は、死者50人、行方不明15人、重軽傷304人など、住家被害は、全壊・半壊・一部破損合わせて1119棟、床上・床下浸水1万4131棟に上っている。(人的被害は、各種報道機関ではさらに大きな被害状況が報じられている。)

 金融庁は、東北財務局、関東財務局が10月13日、東海財務局が10月15日に「令和元年台風第19号に伴う災害に対する金融上の措置について」を要請した。
 各財務局による生保会社、損保会社、少額短期保険業者への要請は、①保険証券、届出印鑑等を紛失した保険契約者等については、申し出の保険契約内容が確認できれば、保険金等の請求案内を行うなど可能な限りの便宜措置を講ずること②生命保険金又は損害保険金の支払いについては、できる限り迅速に行うよう配慮すること③生命保険料又は損害保険料の払込については、契約者の被災の状況に応じて猶予期間の延長を行う等適宜の措置を講ずること④①~③にかかる措置について実施店舗にて店頭掲示等を行うとともに、可能な限り保険契約者等に対し広く周知するよう努めること⑤窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等を行う営業店舗名等を、速やかにポスターの店舗掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、顧客に周知徹底すること―というもの。
 生保協会では15日、「大規模災害対策本部」を設置し、今回の災害への対応方針として▽被災した人に一刻も早く安心してもらえるよう最大限の配慮に基づいた対応を行うこと▽会員会社による被災した契約者等への対応(被災した契約者等の安否確認、保険金等の支払手続き等の案内、迅速な保険金等の支払い等)を積極的に支援すること―を決定、具体的には、①災害救助法が適用された地域の被災契約者の契約についての以下の特別取扱い(▽保険料払込猶予期間の延長▽保険金・給付金、契約者貸付金の簡易迅速な支払い)②災害地域生保契約照会制度の実施③お見舞い広告の出稿④各社における顧客からの相談窓口一覧の作成―以上の対応策を実施することを決定した。
 損保協会では10月13日、「令和元年台風19号による災害により被害を受けられた皆様へ」として「この度の令和元年台風19号による災害によりお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。私ども損害保険業界といたしましても、皆様のお力となりますよう、被害状況の把握に努め、皆様からのお問い合わせ・ご相談等に親身にお応えするとともに、保険金の迅速なお支払いに全力で努めてまいります。」とする「協会長コメント」を発表するとともに15日、協会本部に「2019年度自然災害対策本部」を設置、台風19号および台風15号による災害に総力を挙げて対応していくとした。自然災害等損保契約照会センターも案内中。
 火災保険、自動車保険、傷害保険などの各種損害保険(自賠責保険を除く)については、令和元年台風19号および台風15号による災害により災害救助法が適用された地域で被害を受けた場合、継続契約の締結手続きおよび保険料の払い込みを最長6カ月後の末日(20年4月末日)まで猶予する特別措置を実施する。
 自賠責保険については、国土交通省が15日、宮城県の全域と岩手県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、新潟県、長野県、静岡県の一部の地域に使用の本拠の位置を有する車両のうち、自動車検査証の有効期間が10月15日から10月28日までの車両について、10月29日まで自動車検査証の有効期間を伸長することを公示、自賠責保険(共済)の継続契約の締結手続きを10月29日を限度として猶予する特例措置を講じた。保険料の払い込みは最長6カ月後の末日(20年4月末日)まで猶予される。
 また、少額短期保険協会では、災害救助法が適用された地域の被災者の契約についての特別措置を案内、少額短期保険業者各社の問い合わせ窓口を案内している他、日本共済協会でも災害時共済契約照会制度についての告知を行っている。
 損保各社の対応では、三井住友海上は損害サポート体制として10月10日に、東京(駿河台ビル)に関東災害対策室を450人体制で設置、15日以降は本社部門からの支援者200人を含む最大650人体制で運営している。コールセンターの体制は、10月12日~14日の3連休に事故受付コールセンターを最大の体制で運営、13日から全国11カ所(札幌、仙台、高崎、東京、横浜、名古屋、金沢、大阪、高松、広島、福岡)最大570人体制で臨時の事故受付コールセンターを立ち上げた。同社オフィシャルウェブサイト上での事故受付も可能としている。
 損害調査にあたっては、①ビデオチャットを活用した損害調査の実施(神奈川や長野等)②ドローンを活用した損害調査の実施(14日に東北エリア〈福島・阿武隈川流域〉でドローンによる損害状況の迅速な把握を実施)③その他(昨年から運用を開始した自然災害立会管理システムの本格稼働、RPAを活用した事故登録、書類のPDF化〈予定〉)―などを行う。
 あいおいニッセイ同和損保では13日、恵比寿本社に本社災害対策本部を設置。同時に事故受付拠点として災害対応バックアップセンター(東京都渋谷区)を設置した。地域対策本部は、東北・北関東・埼玉・甲信越・神奈川に設置(千葉対策本部は既に台風15号で設置済)。その他支援体制として、▽吉田川、千曲川、阿武隈川、栃木県佐野市上空をドローンで飛行し損害調査を実施▽保険金請求時のフローにチャットボットを導入▽修理見積書や被災写真の提出をデータで提出できる体制を構築―などを実施している他、昨年活用した視界共有システムを損害調査手法に導入し活用することを検討中としている。
 損保ジャパン日本興亜は災害対策本部として、従来の5拠点(東京2カ所、神奈川、千葉、茨城)に加え、宮城(仙台)、福島(郡山)、栃木(宇都宮)、長野、埼玉(大宮)、静岡)の6拠点に新たに災害対策本部を設置(計11拠点)した。被害報告を受け付けるコールセンターや被害状況の調査に、約600人増員予定(今後増える可能性あり)。迅速な支払対応のため、RPAを全災害対策本部に導入する。
 佐野市、栃木市内の被災状況の把握を目的としたドローンによる空撮を実施、今後他県での実施の可能性もあるとしている。また、風水害で被災した自動車の保険金請求をスマートフォンの写真撮影で受け付ける専用アプリ「Quick CAM(クイックカム)」の利用を開始。
 東京海上日動は、損害サービス体制として社長を本部長とする本店災害対策本部を立ち上げ、被害状況の把握や今後のサービス体制の整備を進めている。また7拠点(同社三番町ビル・虎ノ門ビル・千葉・埼玉・神奈川・静岡・仙台)にも災害対策室を設置し、立会を中心に行う拠点(サテライトオフィス)については5拠点(宇都宮・長野・川越・郡山・いわき)に設置する予定。被害を受けた顧客からの窓口(東京海上日動安心110番)の人員を増員し、顧客からの連絡を受ける。また、ウェブでの受付も行う。被災地での取り組みに加え、被災現地でなくとも業務を行うことができるマルチロケーション対応等も実施。
 その他、▽人工衛星画像を活用した取り組み(水災の被害範囲や浸水高を把握して適切な損害サービス体制を整備するために、一部活用を進める)▽被害が大きかった地域(長野や栃木等)を中心に、被害の全体像を把握するためのドローンの活用▽RPAを活用し、顧客からの被害の報告内容を同社システムに迅速に登録する取り組み―などを進めていく。