2019.10.04 かんぽ生命 契約乗換等調査中間報告 法令、社内ルール違反6327件 営業再開は20年1月めどに

 日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社は9月30日、契約者に不利益が生じたかんぽ契約の乗換等に係る問題に関し、7月31日の会見で説明したかんぽ生命による契約調査の進捗(しんちょく)状況の中間報告と今後の取り組みについて報告するため、東京都千代田区の大手町プレイスカンファレンスセンターで記者会見を行った。日本郵政の長門正貢社長、日本郵便の横山邦男社長、かんぽ生命の植平光彦社長らが出席し、6327件の法令違反または社内ルール違反の可能性がある事案を把握したことを発表した。(4・5面に報告書の全文を掲載)

 会見の冒頭で長門社長は、「このたびのかんぽ問題について、全国の顧客、皆さんに大変ご心配とご迷惑をお掛けしており、あらためて深くお詫びを申し上げる」と謝罪の言葉を述べた。
 特定事案調査(注)の進捗状況について植平社長は、約15万6000人の顧客に対して書面を発送し、9月27日時点で約8万9000人に連絡がついたとして、その内訳は契約時の状況や意向が確認できた顧客が約5万9000人、顧客の都合に合わせて今後確認を行う顧客が約1万3000人、調査ができていない顧客が約1万8000人だと説明した。
 調査結果は、顧客からの回答に基づいた集計結果ではあるが、6327件の法令違反または社内ルール違反の可能性がある事案を把握したとし、「現時点ではこのうち約1400件が法令違反の可能性がある事案と考えているが、さらに調査を進めていく過程で変動する可能性はある」と示唆した。
 復元等の意向に関しては、約15万6000人の顧客で意向が確認できた5万8710人のうち、2万6036人から復元等の詳細説明の希望があることから、顧客の意向に沿わず不利益を生じさせたと認められる事案については案内状を送り、できる限り迅速に対応していく考えを示した。復元等の詳細説明を希望しない顧客には、今回の調査に対する協力への感謝と合わせ、最終意向確認のための書面を送付する。
 今後の対応は、曜日・時間等を変えた複数回の電話でも連絡がつかない顧客には回答用紙を送付し、連絡を取る努力を継続する。また、不着となった顧客は住所調査を実施した上で再度案内を送付する他、電話での意向確認ができていない顧客には再度回答用紙を送付し、協力を依頼する。
 続いて、全契約調査の意向確認の進捗状況を報告。約1900万人の顧客に対して書面を発送し、9月27日時点で約68万通の返信はがき等をもらっているとし、返信はがきやコールセンターに相談があった内容を基に調査を実施する。また、郵便局へ問い合わせがあった場合も、郵便局の社員が窓口の他、訪問や電話により説明する。
 今後の対応については、引き続き調査を継続するとともに、10月には全ての顧客に「ご契約内容のお知らせ」を送付する。また、テレビCMや顧客専用のマイページなど、幅広い手段を通じて取り組みを周知し、広く顧客からの申し出に対応する。
 募集品質の向上を目指した改善策に関しては、本年度のかんぽ商品については営業目標を設定しないこととしており、来年度の営業目標についても、顧客の保有契約を守り、増加させていくという考え方に基づくものにするなど、抜本的に見直しを行う意向を示した。
 契約時のチェック態勢は、8月からかんぽ生命のサービスセンターにおいて、9月からは郵便局においても管理者が全件チェックする態勢を整備している他、契約乗換の申し込みにはシステム上でアラートを表示するなど、新契約を引き受けするプロセスのさまざまな場面において重層的なチェック態勢を構築していると説明した。また、契約の見直しの際に顧客の不利益を防止するための仕組みとして、新規契約が有効に成立したことを条件として既契約の解約等の効力を発生させる「条件付解約制度」や、既契約を解約することなく新たな内容の契約に移行できる「契約転換制度」も順次導入する。
 顧客本位の業務運営に対する態勢整備は、日本郵政グループ全体で顧客本位の業務運営の実現に向け協力して取り組むとした。
 高齢者への募集は、既に満80歳以上の顧客への勧奨を停止していたが、満70歳以上の顧客への勧奨も、満期等で顧客から加入の意向がある場合等を除き停止する。
 グループ会社間の連携強化について長門社長は、内部監査、コンプライアンス、オペレーショナルリスク、顧客満足推進といった各社の経営課題に関するグループ会社間の連絡会等を新設・充実していく考えを示した。
 かんぽ商品の提案の再開について説明した横山社長は、10月1日から顧客対応に支障のない範囲で、郵便局・かんぽ生命支店におけるかんぽ商品の通常営業を段階的に実施することとしていたが、①再発防止に向けた対策などをより浸透、定着させる必要があること②かんぽ生命における特定事案調査について今しばらく時間を要すること③特別調査委員会が年内をめどに調査報告書を作成すること―の3点に加え、関係各所からの意見を踏まえ、通常営業の段階的な再開は20年1月をめどに実施する予定であることを明かした。郵便局で取り扱うその他の金融商品については、11月以降、委託元との調整が整った後、順次再開させていく意向を示した。
 (注)7月31日付「日本郵政グループにおけるご契約調査及び改善に向けた取組について」で示した、契約乗換後に引受謝絶や支払謝絶などの不利益が生じたり、実態把握が必要となった事案(A~F類型)。