2019.07.11 国税庁 保険商品ごとの個別通達は廃止、定期保険税務新ルール実施へ

 国税庁は6月28日、「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)等の一部改正案(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)と保険商品の類型ごとに保険料の損金算入の取り扱いを定めていた法令解釈通達(個別通達)を廃止することについて、パブリックコメントの結果を公表するとともに、改正案を一部修正の上、同日付で発遣した。改正案の骨子は、定期保険等の保険料に多額の前払保険料が含まれる場合、最高解約返戻率に応じた資産計上と損金算入の取り扱いを新たに定めるものだが、当初案で年換算保険料相当額が20万円以下のものを対象外としていたものを30万円以下に変更するとともに、解約返戻金相当額のない短期払の定期保険や第三分野保険について、支払保険料の額が30万円以下のものについては、当該事業年度の損金に算入することを認める改正を追加した。新たに追加された解約返戻金のない短期払の定期保険等で支払保険料の額が30万円以下のものの取り扱いは、10月8日以後の契約から適用される。それ以外の今回の改正通達は、7月8日以後の契約からの適用となった。

 今回廃止された個別通達は、以下の通り。
 ▽平成24年4月27日付課法2―5他1課共同「法人が支払う「がん保険」(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」
 ▽平成13年8月10日付課審4―100他1課共同「法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)」の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)
 ▽平成元年12月16日付直審4―52他1課共同「法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて」
 ▽昭和62年6月16日付直法2―2「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」
 ▽昭和54年6月8日付直審4―18「法人契約の新成人病保険の保険料の取扱いについて」

 今回の通達の改正・廃止について、国税庁は4月11日から5月10日まで意見公募を行い、合計127件の意見が寄せられた。
 その中で、改正の必要性について、「中小企業については、老後の蓄えや設備投資を促すために、今までどおりの取扱いとすべき」「退職給与引当金や大規模修繕引当金の計上が大幅に制限されているため、その代替手段として保険が用いられているのであり、こうした観点からも、保険料の損金算入を認める必要がある」とする意見に対し、国税庁は、「今般の改正は、課税所得の期間計算を適正に行うという観点から定期保険及び第三分野保険に係る支払保険料の損金算入時期に関する取扱いの適正化を図ったものであり、御意見のような観点からその取扱いを定めることは適当ではないと考える」と見解を述べている。
 一方で、「被保険者一人当たりの年換算保険料相当額が20万円以下のものについても、改正通達の対象とするべきではないか」「改正案の20万円は、退職金を準備するには金額が低廉すぎるため、50万円に引き上げてほしい」といった意見を受け、「改正通達案においては、最高解約返戻率が70%以下の保険で、その年換算保険料相当額が少額の場合には、支払保険料の中に含まれる前払部分の保険料を期間の経過に応じて損金の額に算入したとしても、一般に、課税所得の適正な期間計算を著しく損なうこともなく、また、納税者の事務負担の簡素化にも資すると考えられることから、被保険者一人当たりの年換算保険料相当額が20万円以下のものについては、同通達案の適用対象から除外することとしていたが、課税所得の適正な期間計算の確保と納税者の事務負担への配慮とのバランスや今般の改正の全体的な体系について改めて検討し、被保険者一人当たりの年換算保険料相当額30万円以下のものについて、同通達の適用対象から除外することとした」と変更を行った。
 また、従前のいわゆる「がん保険通達」では、「『例外的取扱い』として、保険期間が終身で保険料の払込期間が有期の保険のうち、保険契約の解約等において払戻金のないものは、保険料の払込の都度損金算入が認められていたが、今回の改正案では、支払の都度、損金算入とすることは認められないのか」「従業員の福利厚生を目的として従業員全員を対象とする保険期間が終身のがん保険等に加入している場合、同一の保険契約にもかかわらず、加入年齢によって保険料の経理処理が異なり複雑となるため、がん保険通達で認められていた例外的取扱いを認めるべきではないか」等の意見を受け、「新たに、法人が、払戻金(解約返戻金相当額)のない短期払の定期保険又は第三分野保険のうち、給与課税の対象とはならないものに加入した場合において、その事業年度に支払った保険料の額が30万円以下のものについては、厳格に期間の経過に応じて損金算入を求めなくても課税所得の適正な期間計算を著しく損なうことがないと考えられるので、その支払った日の属する事業年度において損金算入することを認めることとした」と改正の追加を行った。
 以上の他にも、パブコメの指摘によって、改正案で不明確だった部分の明確化が数カ所図られている。
 改正の適用時期については、「公正性の観点から、同一の内容の保険契約には契約の時期にかかわらず同一の取扱いとすることが適当であるとの考え方もあるが、生命保険会社が多くの商品を販売停止としている現況や、納税者の予測可能性の確保等の観点から総合的に判断し、具体的取扱いが決定次第、できる限り速やかに適用することが望ましいと考える」として、一部を除き7月8日以降の契約からとする今回の適用時期を定めた、としている。