2019.07.05 損保協会 金杉協会長が就任 二つの重点課題を設定 自然災害と高齢者・外国人向け取組に注力

 損保協会は、6月28日に開催した定時社員総会で金杉恭三氏(あいおいニッセイ同和損保社長)が協会長に就任した。金杉協会長は7月1日の就任記者会見で、第8次中期基本計画の2年目となる今年度は、初年度に掲げた①SDGs達成への貢献②Society5.0実現への貢献―の二つの観点を踏まえつつ、環境認識と損保業界の使命・機能に基づき、優先的に対応すべきと考えられる「自然災害に対する取り組み」と「高齢者・外国人向けの取り組み」を重点課題に設定し、注力していく方針を示した。また、「これから1年間、損保協会の取りまとめ役としての職務に全力を尽くしたい」と抱負を語った。

 記者会見で金杉協会長はまず、6月18日に発生した山形県沖を震源とする地震について触れ、「被害に遭われた皆さまからの相談に親身に対応するとともに、迅速かつ確実な保険金の支払いに取り組んでいく」と述べた。
 経済の環境認識については、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を1年後に控え、緩やかな回復基調が続いているものの、国際的なリスク要因が不安要素になっていると指摘した。自然環境は、昨今は大規模な風水災や地震などが多発しているとし、「今後見込まれる自然災害に備え、地域に応じた防災の取り組みを浸透させることが重要だ」と強調した。
 また、超高齢社会を迎え、高齢者が当事者となる交通事故が増加していること、生産年齢人口の減少による経済活動への影響が懸念されること、国際的な大イベントの開催により、増加が見込まれる訪日外国人旅行者の受け入れ体制の整備が課題になっていることなどについて指摘し、「このような諸課題はいずれも喫緊のものであり、経済が堅調に推移している今こそ、着実に取り組みを進めるべきだ」との考えを示した。
 続いて、重点課題として設定した「自然災害に対する取り組み」と「高齢者・外国人向けの取り組み」に関して説明。自然災害に対する取り組みでは、各地域の実情に応じたリスク啓発活動をより一層実施していく他、小学生を対象とした「ぼうさい探検隊」、地震保険の加入促進などの取り組みを行うとした。
 高齢者向けの取り組みは、交通事故防止に向けた取り組みを警察や地方自治体などと連携して推進するとした。また、外国人向けの取り組みは、交通事故防止啓発ツールの多言語化や災害時の情報提供ツールの拡充などを行っていくとした。
 その後の記者団とのやりとりでは、多発する自然災害への対応について、「気象庁や会員各社などからの情報を基に、これまで以上に迅速かつ臨機応変に対応していかなければならない」との認識を示した。
 自動運転技術の進歩は、間違いなく事故の発生頻度や発生状況などに影響を与えることになると指摘。同協会でも損保業界に与える影響や、脅威の一つとなるサイバーリスクについて研究を進めているとした。また、自動運転のレベル4やレベル5に向けた技術開発、法整備などを注視しながら、保険適用についても検討していきたいと述べた。一方、直近の2~3年において自動車保険料率に大きく影響することは考えにくいとの見解を示した。
 10月から予定されている消費税率の引き上げの影響は、代理店手数料や自動車の物損事故における賠償責任などにおいて影響が出るとした一方、保険料の参考純率は、各種データを基に損害保険料率算出機構が算出していることから、すぐに保険料が上がるといったことには直接的にはつながりにくいとした。
 高齢ドライバーの交通事故は、件数が増加しているとの認識を示した上で、私見として「自動車は高齢者の移動手段として非常に重要であり、免許返納問題は高齢者の移動手段を阻害することにもなる。高齢ドライバー向けの免許制度が検討されるとの話もあるが、それがセーフティ・サポートカー(安全運転サポート車)に乗る動きにつながれば、高齢者が免許を返納しなくても、安心・安全な運転をすることで、移動手段が確保されるということになると思う」と述べた。
 また、高齢者の交通事故防止に向けた取り組みの中では、セーフティ・サポートカーを案内するなどして、安全運転支援システムの知識を身に付けてもらう他、運転特性のスコアリングやドライブレコーダー付きの自動車保険も販売されていることから、これらのサービスで高齢者の安全運転を支援する取り組みを進めていくとした。
 さらに、高齢歩行者を夕暮れ・夜間の交通事故から守るためのツールとして「ピカチュウ反射材リストバンド」を作成したとして、こうした啓発ツールやチラシなどを配布して啓発していくとした。