2019.05.23 東京海上HD 19年3月期決算、国内事業堅調で増収維持

 東京海上ホールディングスは5月20日、2019年3月期決算を発表した。連結経常収益は前期比1.4%増の5兆4767億円で、このうち正味収入保険料は、円高進行の影響により海外保険会社で同0.3%の減収(現地通貨ベースでは4.1%の増収)となった一方、国内損保事業で同1.1%増収した結果、同0.6%増の3兆5874億円となり、増収を維持した。生命保険料は国内・海外ともに増収し、同10.5%増の1兆535億円となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、海外保険・国内生保の増益の一方で、国内損保の減益や再保険事業売却の影響等により、同3.4%減益の2745億円となった。連結経常利益は同20.7%増の4163億円、修正純利益は同17.7%減の2809億円だった。19年度の修正純利益は、4000億円を見込む。

 国内損保事業では、東京海上日動の保険引受利益が前期比25億円増加し891億円。自然災害に係る発生保険金の増加や為替変動による外貨建支払備金の積増負担の増加、増収に伴う発生保険金の増加があったものの、自然災害に係る保険金支払に伴う異常危険準備金取崩額の増加や、新種保険を中心に全ての種目(民保)で増収したことを主な要因に増益となった。
 正味収入保険料は、同1.8%増の1兆8950億円と前年実績を上回った。種目別では、火災は出再保険料が増加したものの、補償拡充や件数増加を主因に同2.6%増の2819億円、海上は物流量の増加により貨物保険で増収し同4.7%増の627億円、傷害は17年12月の料率改定や加入者数の増加を主因に同2.8%増の1733億円、自動車は18年1月の料率引き下げの一方、補償拡充により同0.1%増の1兆651億円とほぼ横ばい、その他は超ビジネス保険・業務災害総合保険の販売拡大に加え、前年度の保証保険における解約の反動等により3130億円と同6.1%増収した。一方、自賠責は17年4月の料率引き下げを主因に2705億円と同4.1%の減収となった。
 発生保険金(損害調査費含む)は、同1703億円増加し1兆3127億円となった。E/I損害率は、自然災害に係る発生保険金の増加や、為替変動による外貨建支払備金の積増負担の増加等の影響で、同8.6ポイント上昇の70.0%。事業費率は、正味収入保険料の増収を主因に、同0.3ポイント低下の32.3%。コンバインド・レシオ(民保E/Iベース)は同8.3ポイント上昇の102.2%となった。
 資産運用等損益は同144億円減益の2235億円。このうち、ネット利息及び配当金収入は、外国株式で海外子会社からの配当金収入が減少した一方で、再保険事業売却に伴う事前配当が発生したことに加え、内国株式で保有株式の配当金が増加したことなどから、同165億円増益の1835億円となった。
 経常利益は同104億円減の3153億円、当期純利益は同74億円増の2613億円、単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比1.9ポイント低下し825.4%となった。
 日新火災の保険引受利益は、前期比38億円減益の15億円だった。火災・新種保険の販売拡大による増収や自然災害に係る保険金支払に伴う火災保険の異常危険準備金取崩額の増加、自動車保険の繰入率引き下げ等があったものの、自然災害に係る発生保険金の増加や、前年度に自動車保険の大口事故が少なかったことの反動から、前期実績を下回った。
 資産運用等損益は、有価証券売却益・償還益の増加等により、同12億円増益の39億円。
 経常利益は同25億円減の50億円、当期純利益は同9億円減の44億円、単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比101.3ポイント低下し1219.9%となった。
 東京海上日動あんしん生命の新契約年換算保険料は、法人向け商品の販売減を主因として、前期比26.9%減収し746億円となった。保有契約年換算保険料は、新契約の積み上がりにより、同0.6%増収し8577億円だった。
 当期純利益は、標準利率引き下げに伴う料率改定前の契約増加で責任準備金の積増が前年度に一部発生した反動や、法人向け商品の販売減の影響等により、同117億円増益の273億円。基礎利益は、経常利益から外債の売却に係るマイナス影響や危険準備金の積増負担の減少等を控除した結果、同179億円増益の484億円となった。単体ソルベンシー・マージン比率は、前年度末比284.5ポイント低下したが、2063.6%と高い水準を維持している。
 海外保険事業の正味収入保険料は、各事業における成長施策の実行等により、前期比1%(現地通貨ベースでは6%)増収の1兆7663億円となった。北米は、フィラデルフィアの更新契約のレートアップや新規契約の拡大等、デルファイの損保の新規契約拡大等、TMHCCにおける前年度に買収したメディカルストップロス事業の貢献や更新契約のレートアップ等により、同6%増の1兆1079億円だった。欧州・中東・アフリカは、出再割合が高い商品ポートフォリオが増えたこと等により同8%減の1532億円。中南米は、ブラジルにおける自動車保険の引受拡大等により、現地通貨ベースでは増収したものの、レアル安進行の影響により同9%減の1343億円だった。アジア・オセアニアは、タイ、インドネシア、インドにおける増収、セイフティの新規連結等により同5%増収し1493億円となった。
 事業別利益は、米国税制改革による前年度の一時的な増益効果の反動があったものの、デルファイにおける資産運用収益の拡大やブラジルでの収益改善に加え、北米ハリケーンの反動等により、同22%増益の1762億円だった。
 このうち北米は、フィラデルフィアは大口事故の影響や過年度リザーブ取崩の反動があった一方、自然災害に係る発生保険金の減少、減税効果等により増益。デルファイは米国税制改革による前年度の一時的な増益効果の反動で減益したものの、その影響を除くと保険引受損益が悪化した一方で、資産運用収益が増加したことにより実質的に増益。TMHCCは前年度における過年度リザーブ取崩の反動があったが、増収効果や為替換算損益の改善等によりほぼ横ばいで、北米全体では同4%減の1530億円となった。
 欧州・中東・アフリカは、北米ハリケーンの反動や自然災害以外の分野での損害率改善等により増益し、同172億円増の▲1億円。中南米は、ブラジルにおける自動車保険の収益改善を主因に増益して同83%増の92億円。アジア・オセアニアは、前年度のリザーブ取崩の反動等により減益し同12%減の120億円だった。
 19年度の通期連結業績予想は、正味収入保険料は同0.8%減収の3兆5600億円を見込む。生命保険料も1兆300億円と同2.2%減収の見通し。連結純利益は同504億円増益の3250億円としている。