2019.02.13 国土交通省 自転車活用推進本部 第1回自転車の損害賠償保障制度検討会、標準条例案提示される

 国土交通省は1月11日、第1回「自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会」を開いた。同検討会は、2017年5月に自転車活用推進法が施行され、自転車運行による人身事故の損害賠償を保障する制度について、政府が検討した上で必要な措置を講じることが規定されていることを受けて設置された。関連団体の代表や研究者、弁護士など有識者7人で構成され、委員長には羽原敬二関西大学政策創造学部教授が選任された。19年度を通じて地方自治体に条例策定で保険加入を促進することを働き掛けることを踏まえ、標準条例案が提示され、今後は加入すべき保険の保障内容、被保険者への情報提供のあり方、自転車損害賠償保険制度の創設の必要性等について委員から意見を聞く予定。

 初めに、同検討会の事務局を務める自転車活用推進本部事務局から、設立趣旨の説明があった。
 自転車は環境に優しい交通手段であり、災害時の移動・輸送や国民の健康増進、交通の混雑緩和等に役立ち、環境、交通、健康増進等が重要課題となっているわが国では、自転車の活用推進に関する施策の充実が一層重要になっているとの背景説明があった。
 次に、自転車活用推進法との関係で、政府として総合的・計画的に推進するために自転車活用推進本部を創設したこと、また近年、自転車による事故の損害賠償で1億円近い賠償命令が出ていることを踏まえ、被害者救済の観点から、同法附則第3条第2項において、自転車の運行による損害賠償を保障する制度について検討し、必要な措置を講じるとされていることを説明した。
 さらに、自転車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償を保障する制度に関して、専門的見地からの意見を求めると検討会設置の目的が示された。
 次に、事務局から、自転車事故の損害賠償に係る現状について説明があった。
 警察庁の調べによると、近年、自転車関連事故件数は、「自転車対歩行者」は横ばいで、「自転車相互」は減少していたものの15年から増加に転じ、「対歩行者」より多くなっていること、また17年度の事故総件数は9万407件で、相手当事者は自動車が84%、自転車相互、対歩行者がそれぞれ3%であったと説明された。
 事故の類型別では、「対自動車」は出会い頭衝突が54%、「対自転車」も出合い頭が55%で共に最多、「対歩行者」では、横断中が28%、対面通行中が20%で、年齢階層別の事故件数では16~19歳が最多の2661件、これを含め19歳以下が5757件で全体の38%を占めた(交通事故分析センター調べ)。
 事故における責任割合(基本)については、信号のない交差点で事故が発生したケースでは、事故の相手が「歩行者」の場合は自転車が85%、「自転車」の場合は50%、「自動車」の場合は20%となり、歩道上での「歩行者」との事故の場合は100%の責任となると説明された。
 自転車事故の対人賠償事例では、9521万円(神戸・13年)、9266万円(東京・08年)、6779万円(東京・03年)、5438万円(東京・07年)、4746万円(東京・14年)などが高額の賠償として例示された。
 損害賠償保険については、個人賠償責任保険と団体保険に区分けされ、個人賠償保険では自転車事故に備えた保険、自動車保険の特約で付帯した保険、火災保険の特約で付帯した保険、傷害保険等の特約で付帯した保険、団体保険では団体構成員向けの保険、PTAや学校が窓口となる保険がある。その他では共済分野の全労済、市民共済などとTSマーク付帯保険があることが説明された。
 また、自転車損害賠償保険の加入促進について、条例を制定している自治体の状況が報告された。
 自転車利用者に対して自転車損害賠償保険の加入を義務付けているのは、18年3月時点で埼玉県をはじめ6府県5政令都市、「努力義務」としているのは北海道をはじめ10都道県3政令市。同省の行ったアンケート調査によると、加入義務の自治体での同条例認知度は34%、努力義務の自治体では14%で、かなりの差があることも判明したという。さらに加入促進に向けた標準条例案についての説明が行われた。
 同検討会の委員は次の通り。
 古倉宗治(自転車駐車場整備センター自転車総合研究所長)、小林成基(NPO法人自転車活用推進研究会理事長)、古笛恵子(弁護士)、長嶋良(全日本交通安全協会事務局長)、西山光宣(日本損害保険協会傷害保険・第三分野商品実務検討PTリーダー)、羽原敬二、屋井鉄雄(東京工業大学副学長・教授)。