2019.02.12 JA共済連 自然災害での支払3000億見込む 11年度に次ぐ規模に 被災者への迅速な共済金支払い実現

 JA共済連は本年度、自然災害による共済金支払いが東日本大震災の影響を受けた2011年度に次ぐ規模となり、1月末時点の支払いは49万件・2837億円となっている。同連合会業務部では、「年度末までの支払いを3000億円程度と見込んでおり、ここまで、全国各地の職員による相互協力と迅速な対応、寺社仏閣や大型物件への対応として外部鑑定人の派遣、『Lablet’s(ラブレッツ)』の有効活用等が奏功し、迅速な支払いを通じて、一日も早い被災者への生活再建に貢献できている」と話す。また、新たな対応を模索し、現地のJA職員に現場で撮影してもらった動画を、本部(業務部)がリアルタイムで確認し、共済金支払いにつなげるという試みも行い、今後の損害調査の新たな手法の可能性も見いだせたという。

 本年度の大規模災害は大阪北部地震、平成30年7月豪雨(岡山・広島を中心とした前線および台風7号による被害)、9月の台風21号と北海道胆振東部地震、10月の台風24号で、これらのみで総支払見込額は約2390億円となっている。
 共済金の支払い迅速化の背景の一つには、損害調査のスムーズな流れがある。災害発生後の初動では、本部(業務部)から速やかに職員(1、2人)を被災地に派遣し、現地と連携して、ライフラインや被害規模などの情報収集に努め、数日中に適切な損害調査員を現場に投入する。損害調査員の宿泊施設の確保は、業務部から直接電話して行う他、現地入りしたメンバーによる現地での予約、全都道府県に支店のある農協観光のサポートも加わるという。
 業務部建物共済グループの堀弘幸課長は、「日頃から、全国の職員(総合職)全員が損害調査を行えるように研修しているため、大規模災害時はすぐに派遣することができる。寺社や農業施設、養鶏場、高層ビルなどの特殊な施設には外部の専門家(鑑定人)を確保して対応を早めた」と話す。
 また、14年11月からライフアドバイザー(LA)の必須アイテムとして導入したラブレッツに、16年4月に「自然災害損害調査支援ツール」を搭載し、迅速な損害調査を通じて、被災者への安心感の提供にも役立っている。
 ラブレッツは、組合員・利用者の加入状況の確認や、保障設計書の作成、契約の申し込みなどに欠かせないタブレット端末だが、災害発生時には、損害調査員らが使う強力なツールとなる。事故受付や被災家屋の写真撮影から損害調査結果の登録までをラブレッツ1台で完結し、それらのデータを現場からダイレクトに基幹システムに連絡。被災者には、支払可否や暫定の査定額をその場で伝えられるため、喜ばれているという。
 業務部建物共済グループの窪田新太郎主幹は、「損害調査は被災地JAの担当者との2人1組で行う。ラブレッツによる迅速な査定結果を顔見知りのJA職員が丁寧に説明することで、被災者の安心感につながる。さらに損害調査時に、共済に関する相談に加え、農業・貯金など生活全般のコミュニケーションができる点も喜ばれている」と話す。被災地では、「素早い対応で、早期に生活再建のめどが立ち安心した。JAを利用していてよかった」との声が多数聞かれているという。
 堀氏は、「(18年)10月の台風24号の調査・支払いも昨年末までにほぼ収束して、特別体制(注)を解除した。1月末までには9割以上の支払いが完了し、今後は請求勧奨をしていく」という。「台風21号の際に試行したJA職員による動画撮影は、早期の支払いにつながると同時に損害調査の一層の効率化やコスト削減の可能性があり、今後も試したい。支払い迅速化につながる他の方法も探っていきたい」と意欲を見せている。

 (注)全国各地の職員による支援体制、JA共済連本部(業務部)での集中処理の事務体制設置などのこと。