2018.12.04 東京海上日動 水災時の迅速な保険金支払いへ、画像解析で被害エリア特定

 東京海上日動はこれまで、Orbital Insight,Inc.(本社:米国カリフォルニア州、CEO:James Crawford、以下「Orbital Insight」)と連携し、人工衛星で撮影された複数の画像を人工知能(AI)で解析することにより、大規模な水災が発生した際に保険金の支払い対象となる被害エリアを早期に把握して、顧客への迅速な保険金支払いにつなげるための実証実験を実施するなど、取り組みを進めてきた。同社は11月21日、水災発生時に被害範囲や浸水の高さを数日程度で把握できる体制が整ったことを発表するとともに、今後は、水災が発生した場合には実際に活用し、さらなる精度向上に努めていくとしている。

 東京海上日動は、2017年7月~18年3月、コンサルティング会社のアビームコンサルティングと共に、人工衛星画像のビッグデータ分析技術に強みを持つOrbital Insightと連携し、水災発生時の迅速な保険金支払いにつなげるための実証実験を実施した。同社によると、保険金の迅速な支払いに向けて人工衛星画像とAIを活用する取り組みは業界初の試みであり、世界でも珍しい取り組みだという。
 この取り組みは、Orbital Insightが提携する複数の企業から入手した可視光画像(注1)、SAR画像(注2)等のさまざまな衛星画像を組み合わせつつ、過去に発生した台風や水災被害における保険金の支払い実績(水災被害エリアの中で、どの範囲・エリアまで支払いが行われたか等のデータ)も加えてAIによる解析を実施することで、水災範囲、浸水高等を推定するもの。
 通常、台風や豪雨などにより大規模な水災が発生した際、被害状況を確認する対応においては、保険会社の査定担当者や損害鑑定人が現地で立会調査を実施し、有無責を判断した上で、被害状況の調査結果、現場の写真、被害額の見積書等に基づいて保険金の額を算定・精査し、支払う。
 水災が発生した際は被害が広範囲に及ぶため、正確な被害エリアの早期特定が課題となる。また、査定担当者が1件1件立会調査を実施し、有無責の判断を行うことに時間を要するため、保険金の支払いまでに一定程度の期間を要する。このように、大規模な水災発生時には、相応の時間と人員を要することから、より迅速に被害状況を確認するための体制を一層整備していく必要があった。
 東京海上日動では、実証実験の実施後、一部の水災被害への対応において、人工衛星画像を利用し、画像から特定できる水災の被害エリアと同社の火災保険等を契約している顧客の所在地情報を照らし合わせることで、同社にまだ被害の連絡をしていない顧客に対して保険金請求の案内を実施し、無事に保険金を支払うことができた事例があった。
 このような取り組みを通じて、衛星画像活用に関する精度向上を目指してきた結果、実験当初は被害エリアの範囲や浸水高さの特定に1カ月程度を要していたものが、数日程度で把握できる体制が整った。今後、同取り組みを実際の水災が発生した際に活用していくことで、次のような効果が期待できるとしている。
 ▽人工衛星画像のAI解析によって保険金の支払い対象であることが確認できた損害に対し、立会調査等を行うことなく保険金を支払うことで、通常2~3週間程度を要する水災時の保険金の支払期間を大幅に短縮し、被害に遭った保険契約者に迅速に保険金を支払うことができる。
 ▽水災による被害範囲や浸水の高さを数日程度で特定することにより、同社における損害サービス対応の品質向上が期待できる。具体的には、災害対応の方針を迅速に策定し、災害現場での損害サービス体制(立会調査要員の配置や損害査定体制)の早期決定や、顧客への漏れのない保険金の案内等ができるようになる。
 東京海上日動では引き続き、顧客に寄り添った損害サービス対応を行っていくとともに、最先端のテクノロジーを活用することで、さらなる顧客満足度の向上に向けて取り組んでいくとしている。
 (注1)雲や地表面によって反射された太陽光を観測した衛星画像。
 (注2)衛星画像の種類の一つで、雲を透過することができるレーダー画像。