2018.09.12 台風21号と北海道地震 相次ぐ自然災害 業界対応、迅速な支払いへ態勢構築進める

先週、台風と地震が相次ぎ日本列島を襲い、各地で大きな被害をもたらした。9月4日から5日にかけて西日本を中心に猛威を振るった台風21号では、滑走路が冠水して関西国際空港が閉鎖した。6日には北海道胆振地方を震源とする地震(平成30年北海道胆振東部地震。以下、北海道地震)が発生し、厚真町で2016年の熊本地震以来となる震度7を国内で観測。道内全域で大規模な停電が発生し、工場が生産停止するなど、経済活動にも影響が出ている。損保業界では、本社や各地に対策拠点を設置した他、ドローンやRPAも積極活用して被害状況の把握に努めるとともに、迅速な保険金支払いに向けた態勢の構築を進めている。

 損保協会は9月5日および6日付で、西澤敬二会長名で被災者に向けたコメントを発表し、業界を挙げて迅速な支払いに努める意向を示した。6日には、台風21号と平成30年7月豪雨(西日本豪雨)等の大規模自然災害に対応するため、西澤会長を本部長とする「2018年度自然災害対策本部」を設置。北海道地震に対しては、北海道支部に対策本部(本部長=桜井淳一同支部委員長)を置き、各態勢を整えた。北海道地震に関しては、継続契約の締結手続きについて、11月末日まで(自賠責は9月18日まで)猶予できるものとするとともに、保険料の払い込み猶予についても11月末日まで猶予できる特別措置を実施。併せて、地震保険の補償内容や保険金請求手続き等に関するよくある質問をまとめて公表するなど、被災地契約者への情報提供を行っている。
 東京海上日動は、両災害ともに本店災害対策本部の指揮の下で被害状況の把握等に努めるとともに、東京・三番町の拠点にバックオフィスを設置して、双方の対応をサポートしている。保険金請求に関する受付をはじめとして、数百人の人員派遣を含めた態勢の構築を予定しており、事故受付センター「東京海上日動安心110番」では、通常の態勢に50人を増員した。事故受付等については、災害現地でなくても業務を可能とするマルチロケーション対応を実施。北海道地震については、東北・中国エリアの損害サービス拠点を中心に、道内で発生した事故の対応をサポートしている。また、5日から台風21号の被害エリアである大阪府・兵庫県で被害概要の把握等にドローンを利用しており、今後、北海道地震についても、状況に応じて活用していく。
 三井住友海上は、台風21号の被災契約者への対応のため、大阪、名古屋、金沢、高松に災害対策室を立ち上げた。全800人体制で対応する他、大阪ではさらにアジャスター50~100人で対応する。北海道地震に対しては、札幌に災害対策室を設置し、総勢300人体制をそろえた。7月の西日本豪雨で効果的だったビデオチャットを活用した損害調査を実施する他、被害発生当初に立ち入り困難な地域等での損害状況を把握するため、ドローンも活用する予定。両災害とも、東京・駿河台の東京バックアップセンターでは250人以上で対応し、被災地域以外でも対応可能な初動連絡や事務作業の分散化を図っている。その他、顧客への請求書類の送付作業等でRPAや自動アプリを活用して事務効率化を図るとともに、同社での勤務経験があるOB・OGの活用も検討している。
 あいおいニッセイ同和損保では、台風21号への対応のため東京・恵比寿の本社に災害対策本部、大阪市の大阪フェニックスタワービルに近畿対策本部を設置した他、大阪、神戸、京都、名古屋、広島、岡山、高松にそれぞれ災害対策室を設けた。東京・新宿のバックアップセンターで災害対策専用受付デスク(コールセンター)を増強して台風21号事案に対応し、企業物件や高額事案など一部事案については、既存の現地災害対策室で対応するとしている。北海道地震に対しては、地震保険の損害調査、保険金の支払い、今後発生が警戒されている余震等に備えるため、本社対策本部と札幌災害対策室を設置。新宿バックアップセンターでは事故受付や事務周りの業務を行い、札幌・新宿ともに必要に応じて支援要員、鑑定人を追加で派遣する。なお、今回、大阪でドローンを活用した損害調査を行う予定で、他の地域についても検討するとしている。
 損保ジャパン日本興亜では、台風21号による広範囲での暴風雨に伴う被害発生を受け、顧客からの事故報告を受けるコールセンター回線を拡充した。被害の連絡を確実に受けるため、要員を当初約50人増員した後、さらに約100人増員して対応している。災害対策本部は関西を中心に約10カ所で設置。ドローンによる損害状況の早期把握も試み、飛行を想定して、チームメンバーを名古屋入りさせ、各地の被害状況を見極めて飛行場所の検討を行った。北海道地震に対応する対策本部は新宿本社と台風21号で立ち上げ済みの北海道の2カ所で、迅速な支払いのため、数百人規模で損害査定要員を派遣することにしている。コールセンター要員も増員し、ドローンの活用も検討している。両災害とも、RPAを活用し、コールセンターで受け付けた事故報告について、各災害対策室で事故受付後、顧客へ発送する保険金請求書の発送業務に活用する他、事務作業に割く人員を顧客対応に充て、迅速な支払いを目指す。
 消防庁が発表した両災害の被害状況は、台風21号(10日午前10時半時点)が死者12人、重軽傷724人、住家被害は全壊4棟、半壊6棟、一部破損4830棟、床上浸水22棟、床下浸水105棟。北海道地震(11日午前7時45分時点)は、死者41人、重軽傷651人、建物被害は全壊32棟、半壊18棟、一部破損10棟―となっている。