2018.07.27 生保協会 稲垣新会長就任会見、中長期課題 解決に意欲

生命保険協会の第56代協会長に就任した稲垣精二氏(第一生命社長)が7月20日、生保協会会議室(東京都千代田区)で業界紙向けの就任会見を行い、所信を表明した。稲垣協会長は、生保協会が今年設立110周年を迎えることに触れ、「節目の年は、これまでの取り組みを振り返るとともに、将来を見据えた施策をスタートさせるタイミングでもある」との考えを示し、持続可能な経済成長への貢献をはじめ、政府が提唱する「Society5.0」の流れの中で、行政データや医療データの解放といった中長期的な施策について腰を据えて取り組んでいく方針を示した。

 稲垣協会長は冒頭、西日本を中心に広い範囲で記録された台風第7号および前線等に伴う大雨による被害に言及し、犠牲者に哀悼の意を表するとともに、被災者に対しお見舞いを述べた。その上で、災害救助法が適用された地域の契約について、保険料払い込み猶予期間の延長や保険金などの迅速な支払いを実施しており、被災者が安心できるよう適切な対応をしていくと強調した。
 続く所信表明では、まず、少子高齢化や長寿化、人口減少といった国家的課題を踏まえて、女性と高齢者の活躍推進について言及。近年進められてきた対策によって、出産や育児を理由に30代を中心に働く女性が減る「M字カーブ現象」には改善が見られ、高齢者の労働参加についても進んではいるものの、さらなる長寿化が見込まれる現代にあっては一層の活躍が求められるとの認識を示し、「長く健康で働き続けるためには健康維持増進が重要になる」と指摘した。
 一方で、75歳以上人口の割合や要介護者が増加することが想定される中で、単身世帯の増加によって、社会保障や民間保険の重要性はさらに高まると強調した。
 人生100年時代の社会では、働き方や生き方がマルチに変化し、育児や介護といったライフイベントや学び直しなどと仕事を往来する多様な生き方へとシフトしていくことから、本年度は「Create a Brighter Future~安心と希望に満ちた未来を切り開く~」をキャッチフレーズに、①Create the Pathway to a New Era~人生100年時代を切り開く~②Create a Sustainable Society~持続可能な社会を切り開く~③Create Peace of Mind~安心への道を切り開く~―の三つの施策に重点的に取り組む方針を示した。
 ①では、人生100年時代を見据えた金融リテラシー等の教育を推進する。長寿化に伴い、働き方や生き方が多様化していく中で、自分の人生を設計し、その実現に向けて適切な準備を進めるために必要な金融リテラシーを継続的に学べるよう、業界一丸となって仕組みづくりについて検討する。
 新社会人や若年層をターゲットに、YouTubeやSNSへの展開も視野に、楽しく学べる動画コンテンツの制作についても検討する考えだ。
 ②はSDGsへの貢献に向けた取り組みの強化や、ESG投融資の研究、Society5.0の到来という変化を活用したデータの利活用による顧客の利便性向上に向けた検討を実施する。
 生保協会内に「ESG投融資推進WG」を新設し、会員各社の取り組み事例の共有化や、先進的な取り組みを行う投資家のベンチマークを通じて生保業界のESG投融資に関する取り組みのレベルアップを図る考えだ。併せて、ESG投融資に関する自主ガイドラインの策定についても検討する。
 さらに、同協会内にSDGs推進PTを設置し、同協会がこれまで実施してきた各種取り組みをSDGsの観点から整理するとともに、ベストプラクティスの収集・共有を通じて、同協会と会員各社のSDGsの取り組みを強化する方針を明らかにした。
 ③ではお客さま本位の業務運営の推進等、生保事業の基盤整備・確立に向けた取り組みを進める。昨年度に引き続き、会員各社のお客さま本位の業務運営の一層の推進に向け、政府との意見交換会や消費者の声、事務局の運営、金融ADR制度を通じて、会員各社による消費者目線に立った経営と、持続的なPDCAサイクルによるさらなるサービス向上の支援に取り組む。高齢者に配慮した取り組みについては、自主ガイドラインのフォローアップを通じて引き続き会員各社における高齢者対応の底上げに取り組む考えだ。
 一連の施策について説明した稲垣協会長は「業界を取り巻く環境や諸課題と真っすぐに向き合い、解決に取り組んでいく」と強い決意を示した。