2018.07.23 日本地震再保険 第5次中計始動、“首都直下”見据えBCM構築

日本地震再保険はこのほど、2020年度までの3年間を計画期間とする第5次中期経営計画(新中計)を策定し、発表した。①地震保険制度・再保険業務②資産運用業務③経営基盤―の三つの業務領域からなる新中計では、首都直下地震を見据えた実効性のある事業継続マネジメントの強化や、運用力強化による会社収益への貢献、専門家の育成などを通じて、国内唯一の家計地震保険の再保険専門会社として成長を目指す考えだ。

 三つの業務領域のうち、同社にとって最重要課題である地震保険制度・再保険業務については、「強靭(きょうじん)かつ持続可能な地震保険制度の構築」と、「首都直下地震を見据えた実効性のある事業継続マネジメントの強化」に取り組む。
 東日本大震災や熊本震災といった大地震の発生により、多額の保険金と損害調査費用が支払われた。6月には大阪北部地震が発生しており、今後についても首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が懸念されている。こうした状況を受けて、地震保険は、これまでの支払いによる影響を踏まえた、安定的な制度運営に向けた対策が重要な課題となっている。
 地震保険制度は政府や民間の損害保険会社との連携の下に運営されている制度であるため、同社は、地震保険の専門会社としての知見を提供しながら、議論に積極的に参画することで制度の向上に寄与していく考えだ。
 また、首都直下地震を見据えた実効性のある事業継続マネジメントの強化では、東京都中央区に本社を構える同社が被災した場合を想定した演習や訓練の継続的な実施を通してブラッシュアップを行う。
 資産運用業務では「流動性・安定性を担保しつつ、運用力強化による会社収益への貢献」を掲げている。同社では、流動性や安全性の確保を最優先に公社債を中心とした資産運用を行っているが、日銀のマイナス金利政策導入以降、厳しい運用環境が続いている。低金利環境は今後も継続が見込まれることから、同社では流動性・安全性の確保を大前提に、妥当な収益性のあるポートフォリオ構築に向けた戦略を検討する方針だ。
 経営基盤については、「専門家の育成と多様な働き方に対応した職場環境の推進」に加え、「環境変化に対応したガバナンス態勢の構築と適切で効率的な業務運営の推進」を施策に挙げた。同社の社員数は約30人で、平均年齢は約45歳。専門性を持った人材を積極採用してきたが、社内の高齢化が課題となってきた。また、業務の専門性の高さとリソース不足から、社内における計画的な人材育成が困難な状況があった。
 そこで、組織としての強靭性を高めるため、新中計では、年齢構成を踏まえた人材の育成に取り組むことを決定。さらに、育児や介護、病気の治療を受けながらの就労といった多様な働き方に対応した職場環境の実現に向け、在宅勤務等の新たな施策を検討する考えだ。また、昨今注目されているAIやRPAといった新技術による業務効率化について検討を進める方針を示した。