2018.03.30 損保ジャパン日本興亜 アドバイザー自動知識支援システム、全国に本格導入開始

損保ジャパン日本興亜は3月から、NTTコミュニケーションズ(NTTCom)のシステム構築による、音声認識AIを活用した「アドバイザー自動知識支援システム」を、すでに導入済みの一部コールセンターに加え、全国のコールセンターで本格導入を始めた。また、コールセンターの一層の機能強化を図り、NTTグループのAI技術「corevo(R)」(コレボ)を活用して、将来の音声自動通話対応を見据えた共同実験も開始。両社は、「アドバイザー自動知識支援システム」の利用によるAIの学習と共同実験を通じて、受電した顧客に対してAIが音声で回答する「AIによる自動通話対応=バーチャルアドバイザー」の実現を目指す。

 損保ジャパン日本興亜は、2016年2月1日から、自動車保険・火災保険・傷害保険などの一部のコールセンターで、NTTComによる「アドバイザー自動知識支援システム」を導入。同システムは、顧客とコールセンターのアドバイザー(「オペレーター」の損保ジャパン日本興亜での呼称)との通話内容をAIによる音声認識技術(音声マイニングシステム「ForeSight Voice Mining」)でテキスト化し、そのテキストデータに基づいて、アドバイザーが使用するパソコン上にリアルタイムで最適な回答候補を表示するもの。
 「アドバイザー自動知識支援システム」の導入後、AIの学習が深まったことで、音声認識精度は当初の80%台から95%に近づくとともに、認識した質問に対する回答候補の表示精度も80%を超える成果が得られたことから、今回の本格導入が決定した。
 今後、コールセンターのさらなる機能強化を目指して、損保ジャパン日本興亜とNTTComでは、NTTグループのAI技術「コレボ」を活用して、共同実験を行う。
 このうち、「顧客の用件の自動抽出」に関する実験は、現在のシステムでは、複数の発言のうちどの発言に関連したQ&Aを表示するかをアドバイザーが自分で選択する必要があったことから、アドバイザーが選択しなくても、会話の中でどの発言が重要なポイント(顧客の用件)かをAIが自動で把握し、その用件に関わる回答候補をアドバイザーに表示するなど、回答の正確さや迅速さの向上効果を検証する。また、重要なポイントが自動表示されることにより応対履歴の入力作業が効率化されるため、その効果についても検証する。
 また、「知識の自動獲得と文章の自動作成」に関する実験では、一般に、コールセンター業務を支援するAIは、事前に用意されたQ&A形式のデータベースから適切な回答を探し出すため、Q&Aがカバーし切れていない質問への対応は困難だったことから、表も含む文書の構造をAIが自動的に認識する技術を用いて、パンフレットや契約のしおりなどの既存文書をAIが“読む”ことで、そこに書かれた内容を新たな知識として獲得し、回答文を自動作成。これにより、Q&Aにない質問に対応することも可能になる。また、人間がQ&Aを作成する際の業務負荷軽減も見込まれることから、その効果を検証する。
 超高齢社会の到来による労働人口の減少により、コールセンターの人材確保が困難になることが見込まれる中、バーチャルアドバイザーの実現により、簡単な問い合わせについてはアドバイザーを介さずに、AIによる正確で迅速な回答が可能となる。一方、アドバイザーが回答することが好ましい問い合わせについては人間が対応するなど、「ヒト」と「機械」が融合したコールセンターの構築を目指す。
 損保ジャパン日本興亜は、今後もAIをはじめとした先進技術活用の検討を進める方針だ。