2018.01.30 日本生命 4月1日付役員人事発表、新社長に清水専務
日本生命は1月25日の取締役会で、清水博取締役専務執行役員を4月1日付で代表取締役社長とする役員人事を決定した。筒井義信現代表取締役社長は代表取締役会長に、岡本圀衞現代表取締役会長は取締役相談役(7月開催予定の定時総代会終結時をもって取締役退任予定)に就任する。同日、東京都千代田区の同社会議室で行われた記者会見で清水専務は、国内の生命保険市場について、「引き続き成長市場だ」との認識を示し、①販売チャネルの競争力強化②先端IT技術による事業変革③グループ事業の強化―に重点的に取り組む方針を示した。
記者会見で筒井社長は、この時期に役員人事を発表した理由について、「在任7年間において、現在推進する中期経営計画を含めて3度経験し、その中で、長期的な経営路線を進める体制作りと、それに基づく具体的な戦略実行という点で一定の道筋がついた。現中期経営計画の初年度だが、とりわけ超低金利対応の体制強化にめどを付けたこのタイミングが好機と判断した」と述べた。また、適度な新陳代謝は持続的発展の要諦であり、社内に活性化の気風を与え、役員の自覚を促す契機になることや、清水専務を含め次世代を担う人材が育っているという確信を持ったことも挙げた。
次期社長に清水専務を選出したことについては、昨今のコーポレートガバナンスの議論の高まりを受け、社外取締役委員会を設けており、複数の候補者を挙げて審議してきたとし、「清水専務は人格・見識・人望の観点から最もふさわしい人物だという結論に至った」と説明した。
在任期間の中で印象に残っていることとして筒井社長は、東日本大震災を挙げ、「震災発生直後の就任で、最初の仕事が震災対応だった。被災地に出向き、現場の営業職員が自ら被災しながらも顧客対応や被災者支援に全力を尽くしていた、その姿を垣間見て、あらためてフェイス・トゥ・フェイスの重要性と生命保険事業の社会的意義を認識した。非常に感慨深いスタートだった」と振り返った。
清水専務は、社長就任の打診があった時の心境について、「責任の重さに正直震えたが、ここまで育ててもらった日本生命で私が果たすべき役割があるのなら、それを辞退する選択肢はないと覚悟を決めた」と語った。
国内の生命保険市場については、人口減少や高齢化、会社間やチャネル間競争の激化、先端IT技術の急速な進歩といった事業環境の変化に触れた上で、「国内の生命保険市場が人口減少に伴って単純に縮小していくとは考えていない。事業環境が変化する中において、長寿化、健康、資産形成などさまざまなキーワードを軸にして生命保険のニーズは多様化している」と述べ、国内の生命保険市場は引き続き成長市場だとの認識を示した。
また、重点的に取り組む方針を示した販売チャネルの競争力強化では、同社の強みである営業職員チャネルの強化を一層進めるとともに、代理店や金融機関チャネルにおける金融競争力を一段と引き上げる。先端IT技術による事業変革については、新年度体制を強化して検討していく。グループ事業のさらなる強化においては、既に海外事業やアセットマネジメント事業を軸に事業展開しているが、収益の多様化や分散は、グループ全体の成長と収益の安定化につながる、と考えを述べた。
海外事業は、筒井社長が事業拡大を図る中で同氏が捉える重要な点として、「信頼できるパートナーの存在」「グループ間シナジー」「事業や地域の分散」を挙げ、「これらを見極め、着実に案件を進めていることが事業拡大につながっている。この精神や視点を引き継いでいきたい」との考えを示した。
先端IT技術に関しては、例えばRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のような現在の業務プロセスをより改善・向上させるような技術や、AIやビッグデータを活用した商品開発、引き受けの拡大といった生保事業の高度化に結び付くようなものは積極的に研究して取り入れていきたいとした。