2017.12.13 東京海上日動「家主費用・利益保険」 孤独死対応商品に反響

誰にもみとられることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような孤独死の事例が多く報道されているが、実際に、孤独死は毎年増加傾向にある。東京海上日動の「家主費用・利益保険」は販売開始と同時に賃貸物件オーナーから高齢化時代の万一に備える保険として多くの反響を得ている。2017年度上期の契約件数は、前年対比で約180%と大きく伸展している。

 賃貸戸室で孤独死や自殺、犯罪死が発生すると、以後、入居者募集に際して「重要事項説明義務」が生じ、なかなか入居者が見つからないため、家賃を値引きして募集することにより、家賃損失が発生することがある。また、賃貸戸室の原状回復費用や遺品整理費用をオーナーや管理者が負担せざるを得ないケースもある。
 東京海上日動では、こうした家賃損失・費用は、オーナーや管理業者にとって賃貸住宅経営上の大きなリスクであると捉え、今回の商品開発に至ったとしている。
 保険料は低廉に抑えられており、月額家賃6万円の戸室であれば、月額保険料200円から加入でき、家賃対比で0.3%程度となっている。
 特徴的なのは、アパートの新築時だけでなく、建築済みの賃貸物件のオーナーが加入することが多い点だ。同社の家主費用・利益保険は火災保険とは別商品のため、この補償だけ加入することができる。そのため、アパートローンの期間に合わせた長期火災保険を契約中の顧客が、火災保険とは別に、同保険に加入するケースが多くなっている。契約件数が大きく伸びている理由も、火災保険とは別に加入できる商品であるため、代理店から賃貸物件オーナーに案内しやすいことも一因と考えられる。
 孤独死や自殺、犯罪死が発生すると、近年では戸室を完全に改装するケースも多い。顧客からは支払限度額の拡充の要望が多く寄せられていたため、今年4月に、従前の100万円以外にも、200万円、300万円から選択できるように改定した。また、家賃の損害については、最大で2年間の支払限度期間を設定できるため、空室の発生や家賃値引きの発生時の損害を補償することができ、好評だという。
 同社では現在、同保険について、普及率の向上を最大の課題としている。保険料・契約件数共に増加しているものの、賃貸物件マーケットの規模からすれば、保険業界全体を見渡しても、まだ普及が進んでいるとはいえない。少子高齢化が進む日本社会で、孤独死による賃貸物件の収益損失は、賃貸物件オーナーにとって大きなリスクとなることが想定されることから、東京海上日動では、今後も保険による備えの必要性を伝えていきたいとしている。