2017.12.01 生保協会 定例会見、超長期債発行減に反対、中国の外資参入規制緩和を歓迎
生命保険協会の橋本雅博協会長は11月20日、日銀記者クラブ定例会見を行った。2016年9月に導入されたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)について、イールドカーブは多少立ってきたとする一方、「超長期金利は低い水準にある。厳しい運用環境は続いている」と述べた。また、国の債務管理の在り方に関する懇談会で挙がった生保の保険負債の変化への懸念について、長期債の大量購入は収益の低下を招くことになるとしながらも、超長期債の需要は一定程度あるため発行減額には反対の考えを示した。中国当局の外資参入規制緩和については、「ビジネスチャンスが広がる歓迎すべき事柄」と述べると同時に、業務面での緩和に議論が進展していくことがあれば期待したいとの見解を示した。
橋本協会長はイールドカーブ・コントロールはマイナス金利のさまざまな副作用への配慮で導入されたとの認識を示し、「イールドカーブは多少スティープになったが残念ながら、20、30年といった超長期の金利はいまだ低い水準にとどまっている」と示唆。ALMの観点からも国債投資は長期保有が原則であり、生命保険会社としては長期の金利水準が極めて重要とし、「厳しい運用環境が続いていることに変わりなく、副作用が解消されているとは言い難い状況」との見解を示した。一方で、物価目標2%に達していない状況であっても上昇基調が確認されデフレ脱却が目線に入ってきた場合は、「政策的に10年金利の目標引き上げなどの対応があってもいい」と指摘。「ただし、デフレ脱却は極めて大事な命題であるため、それを損ねてまでとは考えていない」とも付言した。また、将来的に生保の保険負債がビジネス環境で変化し超長期債が安定して消化できないのではないかという懸念が上がったことについて記者から「本当に超長期債は買わなくなるのか」と問われると、「金利リスクが顕在化するため、デュレーションギャップを一定程度維持、埋める観点からも、一定程度の超長期債の需要は存在する」と回答。その上で、超長期債の発行減額には反対との考えを示した。
中国当局が発表した外資参入規制緩和が日本の生保業界に及ぼす影響に関しての質問には、「海外戦略は各社の濃淡があるが、ビジネスチャンスが広がる意味で歓迎すべき事柄」と述べた。個社の立場と前置きした上で、海外戦略の検討・研究の幅が広がっていくとし「今回は出資規制の緩和だが、業務面における緩和などについても、今後、議論が進展していくことがあれば期待したい」と展望した。また、銀行窓販全面解禁から12月で10年を迎える中で、今後の市場について、「銀行というアクセスしやすい場所での保険販売は、今後も一定程度進展するだろう」と拡大方向の見解を示した。
さらに、生保会社が破綻した金融危機から20年を振り返って現在の生命保険業界を取り巻く環境について意見を求められると「セーフティーネットを作ったことが大きな進歩の一つだった」と回答。「リスク管理やALM対応などの業績偏重ではない、内部管理や危機対応力といったものが生保危機の一連の流れを通じて現在の経営に生きていると感じる」と述べ、保険金を支払うという社会的使命を果たすよう当時の教訓を忘れずに経営を行う心構えが大事だと強調した。