2017.10.02 損保ジャパン日本興亜 物流業者包括賠責保険を改定、業界初 最大1億円補償

 損保ジャパン日本興亜は9月1日から、物流業者包括賠償責任保険「L―Pack」を改定した。輸送中や作業・保管中のてん補限度額の上限を従来の5000万円から1億円に引き上げるとともに、運送人の過失による生鮮食品等冷蔵・冷凍貨物の温度変化損害を補償するオプションなどを新設した。てん補限度額1億円は業界初となる。同商品の発売以来、約20年ぶりの大掛かりな改定であり、労働力不足や輸送形態の多様化といった物流業界の課題の解決を後押しし、商品の差別化を図る考えだ。

 物流業者包括賠責保険は、運送事業者が受託した貨物の輸送中・作業中・保管中に生じた損害によって貨物の所有者や元受運送人に対して負担する法律上・契約上の賠償責任や各種費用損害を補償する。今回、改定したのは、輸送中や作業・保管中のてん補限度額と免責金額で、輸送中のてん補限度額は、従来の「100万~5000万円」から「50万~1億円」に、作業・保管中は「輸送中のてん補限度額の5倍か5000万円のいずれか低い額」から「輸送中のてん補限度額の5倍か1億円のいずれか低い額」に、また、免責金額は「1万~20万円の全5パターンから選択」から「5000~100万円の全10パターンから選択」に変更した。
 また、顧客の多様なニーズに対応し、①急送・回収費用(誤配送や積み忘れなどによって発生する緊急的な輸送費を補償)②修理費用超過補償(受託した中古貨物に損害が発生した際に時価を上回る修理費用を補償)③高額危険(火災、爆発など特定危険担保条件による輸送中の高額損害を補償)④臨時費用(損害が発生した際の臨時に掛かる費用を補償)⑤冷蔵貨物ワイド補償(冷蔵・冷凍・保冷状態や定温管理の貨物について、輸送・作業中に発生した運送人の過失などによる温度変化損害を補償)―といった五つのオプションを新設。過失による生鮮食品などの温度変化損害を対象とする冷蔵貨物ワイド補償は業界初となる。この他、従来オプションとしてある第三者賠償責任も、てん補限度額の上限1億円への引き上げや、荷役のために一時的に借用したフォークリフト自体の損害の補償、といった改定を加えた。
 今回の商品改定には、物流業界が抱える課題と解決に向けた国の施策が背景にある。ドライバー不足や高齢化、インターネット通販の拡大などによる荷主・消費者ニーズの多様化、50%を下回る平均トラック積載率、といった現状を受け、労働力不足の解消や流通業務の省力化を図るために、2016年に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)」が改正。①モーダルシフト推進事業(鉄道・船舶も活用した効率的な輸送手段の選択)②地域内配送共同化事業③輸送網集約事業(総合物流保管施設へのトラック営業所の併設、予約システムの導入など)―といった取り組みが進められている。同社では、こうした「効率的な輸送」に向けた変革の中で、1回当たりの輸送額の増加や運送業者のニーズの多様化を見越して今回の商品改定を行った。
 商品改定を推進した同社海上保険室貨物保険グループの小方章仁課長代理は「今回の商品改定は、物流業者のお客さまから特に引き合いの多かった要望をピックアップすることで運送業界の課題に対応し、国の推進する輸送の効率化の流れをバックアップすることを目的に行った。また、われわれとしても、既存のお客さまはもとより、これまでアプローチできていなかったお客さまのニーズも掘り起こし、しっかりした補償を提供することで、ウィンウィンの関係が築いていければと考えている」としている。