2017.09.29 損保協会 定例会見、第7次中計総仕上げ、「引続きスピード感持ち取組む」

 損保協会は9月22日に業界紙向けの定例記者会見を行い、前日に日銀記者クラブで行われた原典之協会長の会見内容を報告した。原協会長は第7次中期基本計画の進捗(しんちょく)について、本年度は最終年度であることから、総仕上げに向けて引き続きスピード感を持って取り組む考えを示した。また、第8次中期基本計画の策定に向け、「環境変化への対応」「顧客本位」「制度の健全性強化」「国際連携」の四つの方向性に沿って具体的な施策や取り組みなどについて議論を進めているとした。

 日銀記者クラブで行われた会見で原協会長は、第7次中期基本計画の重点課題である自然災害への取り組みについて、8月27日から地震保険の広報活動を実施するとともに、自治体との共同取り組みや啓発イベントなどを通じて地震保険の普及・啓発に取り組んでいると説明した。
 グローバル化の取り組みについては、9月17~20日まで、11年ぶりに東京で開催された国際海上保険連合(IUMI)の年次総会に参加したことや、原協会長が7月に英国保険協会、8月にインドネシア損保協会を訪問し、意見交換したことなどを報告した。
 保険犯罪への取り組みでは、不正請求防止に向け、来年度より運用開始を予定している不正請求疑義事案の検知を目的とした保険金請求歴表示システムの開発に着手したことを明らかにした。
 その後、記者から「今夏の自然災害における被害状況と業績への影響」「九州北部豪雨の特徴と災害の規模等に関する総括」「日銀の金融政策とマイナス金利の評価」について質問が挙がった。原協会長は自然災害の被害状況について、九州北部豪雨と台風5号にかかる8月末時点の支払件数や支払保険金額等(見込み含む)について報告するとともに、台風5号については今後も増加する可能性があると示唆した。九州北部豪雨の特徴と災害の規模等については、被害の多くが水災のため、台風5号と比べて支払件数が少ないにもかかわらず、支払保険金額(見込み額含む)が大きいと指摘した。
 日銀の金融政策とマイナス金利の評価については、一般論として、マイナス金利は景気回復や物価上昇などの効果がある一方、金融機関にとっては収益のマイナス要素になるとの見方を示し、「日銀においては金融政策の効果と副作用の両面を検証して適切な運用をお願いしたい」とコメントした。
 業界紙向けの定例記者会見ではこの他、11月6日にイイノホール(東京都千代田区)で開催する予定の同協会創立100周年記念イベントについて、詳細を説明した。同イベントは、損保業界の次代を担う中堅・若手職員が、自身の業務の在り方や業界の未来等について考えるきっかけにするとともに、将来にわたり希望を持って仕事ができるようにすることを目的としている。パネリスト3人(保険分野、社会経済分野、科学技術分野)と司会者1人によるシンポジウム形式で、各分野の専門家の立場から、今後の社会の変化を予測し、損保業界のあるべき姿を考える。特に、科学技術の進歩に伴う可能性の広がりや社会経済問題の解決に向けた役割などの論点から討論する。司会は毎日新聞社の福本容子論説委員、パネリストは森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士(保険分野)、日本総合研究所の翁百合副理事長(社会経済分野)、東京大学大学院工学系研究科の松尾豊特任准教授(科学技術分野)が務めることとなっている。