2017.09.11 第一生命・日立が共同研究 ビッグデータ分析で引受基準見直し、加入範囲拡大に成果

 第一生命と日立製作所はこのほど、医療ビッグデータ(注1)を生命保険事業に活用するための共同研究で、「生活習慣病に起因する入院の可能性とその日数」を予測する定量評価モデルを開発したと発表した。第一生命では7月から、同モデルを基に、引き受け基準の見直しを実施。見直し後の約1カ月間で、合計300人以上が新規に加入できたという。両社は今月から、共同研究の第2弾として、「一人一人の健診結果の推移」や「生活習慣の変化」に着目した基礎研究に着手する。

 これまでは、生活習慣病などの健康状態を理由に、生命保険に新規に加入できないケースや、生命保険には加入できるものの8大生活習慣病(高血圧性疾患、急性膵炎およびその他膵疾患、糖尿病、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、脳血管疾患、悪性新生物)を保障する特約を付けられないケースがあったが、引き受け基準の見直しにより、加入範囲の拡大が実現した。
 今回の引き受け基準の見直しは、2016年9月に開始した共同研究で、第一生命が長年蓄積してきた約1000万人の医療ビッグデータを基に、日立の医療費予測技術で培った分析ノウハウを活用して解析を行った成果の一つ。
 個人の健康を阻害する要因にはさまざまな要素が複合的に関連しているが、これまで第一生命が蓄積してきた医療ビッグデータと従来の手法を用いた分析では、これらの関連性を踏まえた評価を行うことに一定の限界があった。
 そこで共同研究の第1弾では、日立が保有する先進的な分析手法・ノウハウを活用して、「糖尿病や血管系疾患など8大生活習慣病に起因する入院の可能性とその日数」を予測する定量評価モデルを開発。同モデルを用いることで、複雑に絡む複数の「健康を阻害する要因」を加味して、将来入院する可能性とその日数を予測することが可能になるという。
 このうち、高血圧治療中の人について、同モデルを用いることで、その他に一定程度「健康を阻害する要因」がある場合でも、健康な人の入院可能性・日数との差が小さい場合があることなどが確認できたため、第一生命は該当する顧客の一部を引き受けできるように基準を見直した。
 両社は、第1弾で得た知見をさらに深め、9月から共同研究の第2弾を開始。通常、生命保険契約では、加入時の健康状態を基に引き受けの可否を判断するが、加入時に同じ健康状態の顧客でも健康状態の推移や生活習慣の変化によっては、将来の入院・死亡の可能性は異なると考えられることから、こうした要因にも着目し、日立の分析手法・ノウハウを活用した基礎研究を実施して、より一層適切な引き受け範囲の見直しに役立てていく考えだ。
 第一生命は、今回の共同研究を通じて健康寿命の延伸という国民的課題や疾病予防・重症化予防、健康づくりの強化に寄与し、顧客の「健康サポート」を拡充することで、さらなる生命保険事業のイノベーション創出に向けて取り組んでいく。
 また、日立は、保険の引き受け業務など保険会社特有のデータ内容や分析手法に関する知見を深め、保険業務におけるデータサイエンス・スキルのさらなる向上を図るとともに、共同研究第1弾の取り組みをIoTプラットフォーム「Lumada」(注2)のユースケースとして広げ、今後もさまざまなステークホルダーとの協創を通じて、革新的なITサービスの開発・提供を推進していくとしている。
 (注1)個人を特定できないよう、データを匿名加工した上で活用。
 (注2)日立の幅広い事業領域で蓄積してきたOT(Operational Technology)とITの融合により、IoT関連ソリューションの開発と容易なカスタマイズを可能とするIoTプラットフォーム。