2017.07.20 日新火災 マンションドクター火災保険、「現況を公平評価」で人気
日新火災の「マンションドクター火災保険」はマンション共用部分を取り巻くリスクを総合的に補償する、管理組合向けの火災保険。マンション管理士が診断し、マンションの「メンテナンス状況」に応じた保険料を実現した業界初の保険だ。販売開始した2015年10月から1年間の販売件数は532件だったが、その後急増し、昨年10月から今年5月末までの8カ月間で、販売件数は既に593件、累計で1125件となっている。適切なメンテナンスを行ってきたマンションの管理組合からは、「築年数のみで判断せず、現況を評価する公平な保険商品」と高い評価が得られている。
現在、国内には10万棟以上のマンションが建っているといわれているが、築20年を超える高経年マンションが増加しており、その割合は全体の40%を占めている。こうした高経年マンションでは、特に老朽化に伴う給排水管からの漏水事故が急増しており、その対策が喫緊の課題となっている。
高経年マンションでの事故の増加により、損保各社とも損害率が急激に悪化し、数年前からは「建築年数別の料率体系」を導入し、建物の築年数が経過するほど保険料を大幅に引き上げるなど、この分野における火災保険の引受環境は厳しいものとなっている。一方、築年数だけで保険料を決定されることに対しては、管理組合からも不満の声が聞かれるようになったという。
高経年マンションでの事故の増加は同社においても同様で、築20年以上の物件については過去5年間平均の損害率が100%を超えているため、こうした物件の引き受けを中止するなど対策を講じてきた。
しかし同社は、事故発生原因を考える中で一つの疑問を持つようになる。それは、同じ高経年マンションでも、適切なメンテナンスを行っている物件と行っていない物件が同じリスクなのかという点だ。
この点について実態調査を行った結果、真のリスクは「高経年かどうか」ではなく、「メンテナンス状況の差」にあるのではないかという結論に至った。
そこで、真のリスクを見極めた上での保険引受方法として考えたのが、同社が業務提携する一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連)が実施する「マンション管理適正化診断サービス」の診断結果に応じて保険料を決める仕組みだ。
日管連に所属するマンション管理士が同サービスによる診断を行った結果、適切なメンテナンスが実施されており、管理状況が良好なことが確認された場合は、20~30%程度の割引率が適用される。
マンション管理士が診断する項目は全部で14項目あり、管理組合の管理実態や長期修繕計画・修繕積立金の設定状況、給排水管や外壁の修繕工事の実施状況等について、書面や管理組合へのヒアリングにより確認する。特に給排水管の修繕工事実施状況についてはその配点のウエートは高く、この項目の実施有無によって割引率が大きく異なる。
診断実施後には、マンション管理士から管理組合に対して「診断レポート」を無料で提供するため、管理組合も自分のマンションの管理状況を把握することができる。
「マンション管理適正化診断サービス」を行った後の同保険成約率は43.7%に上る。実際に加入した管理組合からは「地道にメンテナンスを行ってきたのに築年数だけで保険料が決まるのは不公平だと感じていた。正当な評価をもらうことができてうれしい」「給排水管修繕工事の資料を提出したことが評価に結び付いた」との声が寄せられている。
商品企画部火新グループの山村直弘課長代理は「診断レポートにより、管理組合は今後の改善点を認識することができる。本商品を通じて、マンションの住環境を維持・向上させることができ、広い意味での社会貢献にもつながるのではないか。今後は、診断サービスの項目を、よりリスク実態に応じた内容に見直すことも検討している」と話している。