2017.07.07 損保協会 原協会長が就任、今後の方向性、環境変化対応等、第7次中計最終年度着実に

 損保協会は、6月30日に開催した定時社員総会で原典之氏(三井住友海上社長)が協会長に就任した。原協会長は7月3日の就任記者会見で、今後の取り組みの方向性として、①よりフォワードルッキングな環境変化への対応②「お客さま本位」の業務運営の追求③より強固で安定的な損害保険制度の確立④国内外での存在感発揮に向けた関係機関との連携強化・意見発信―の4点を示した。また、「この1年は将来を見据えつつも、101年目をスタートする“基礎固め”に取り組むことが重要だと考えている。まずは本年度で最終年度となる第7次中期基本計画を着実に仕上げ、そして、今後の方向性を踏まえ次期中期基本計画の策定を進めていく」と強調した。(2面に原新会長の所信を掲載)
 記者会見で原協会長は、前協会長の北沢利文氏(東京海上日動社長)の尽力に心から敬意を表するとともに、「当協会が100周年を迎えたこの節目に協会長という大任を仰せつかり、身の引き締まる思いだ」と心境を語った。
 また、同協会の過去100年の取り組みについて、「当時のわが国の損害保険マーケットは、海上・運送保険が中心であり、収入保険料の規模は小さなものだった。今日に至るまで、社会は目まぐるしく変化し、損保業界はこの環境変化に合わせて事業基盤の整備や損害保険の普及に努めてきた」と振り返るとともに、「保険金の支払い漏れ問題もあり、その反省から商品の分かりやすさ、保険金支払いに関するインフラ整備など、顧客視点に立った取り組みを推進してきた結果、この100年でマーケット規模は200倍以上になり、損保業界は社会の発展とともに着実な成長を遂げてきた」と述べた。
 環境認識については、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AI(人工知能)等の技術革新が今後さらに進展し、暮らしやビジネスが大きく変わっていくことから、それに伴ってリスクも変化すると指摘。国内外で人口構成や人口分布が大きく変化することが見込まれ、環境面でも温暖化が進み、気候変動に伴う自然災害のリスクが高まる懸念があるとし、「こうした変化に伴い、リスクが従来以上に多様化することが想定される。損保業界はリスクの担い手として、今後もより良いサービスを提供していきたい」との考えを示した。
 今後の取り組みの方向性には、①よりフォワードルッキングな環境変化への対応②「お客さま本位」の業務運営の追求③より強固で安定的な損害保険制度の確立④国内外での存在感発揮に向けた関係機関との連携強化・意見発信―の4点を示し、さらに顧客の役に立てるようこれまでの取り組みをレベルアップさせていくことや、損保会社の使命を果たすべく、今後想定される大規模地震等の際の業務運営態勢を強化していく必要があること、保険料を公平・公正に分配するといった損保制度の信頼性を向上させる取り組みが重要なことなどを説明した。
 また、本年度で最終年度となる第7次中期基本計画を着実に仕上げていくとした上で、今後の方向性を踏まえて次期中期基本計画を策定していくとし、具体的には第7次中期基本計画の重点課題を中心に、新しい中期基本計画も展望しつつ、損害保険トータルプランナーの増加策の検討や同協会の事業継続計画の見直し、不正請求の防止対策などを進めていくとした。
 その後の記者団とのやりとりでは、今後のICT(情報通信技術)対応について、昨年公表した自動運転の法的課題に関する報告書を例に挙げ、同協会では環境整備に関わる取り組みを進めていることを説明。今後も必要に応じて意見等をまとめ、発信していくとした。
 国内外の関係機関との連携強化・意見発信については、引き続きISJ(日本国際保険学校)などを通じてアジアの損保事業の健全な発展に寄与していく考えを示した。また、不正請求の防止にはデータベースの構築が最も効果的だとして、業界内で共有する不正請求データの種目を拡大するなどシステム強化を図る。
 地震保険の普及については、会員各社や代理店と共に引き続き取り組んでいく姿勢を示した他、東日本大震災では航空写真・衛星写真を用いた全損認定や顧客の自己申告に基づく損害調査、熊本地震においてはモバイル端末を活用した損害調査など、保険金の早期支払いに向けて導入した施策を拡充することで、今後発生が懸念される大規模地震にも対応していきたいと述べた。