2017.06.23 かんぽ生命 終身保険の保険料低廉化など、新規業務で認可を取得

 かんぽ生命は6月19日、郵政民営化法の規定に基づき、3月31日に行った終身保険等の見直しと法人向け商品の受託販売を内容とする新規業務の認可申請で、金融庁長官・総務大臣から認可を取得した。終身保険等の引き受けは10月以降、受託販売の取り扱いは6月30日の開始予定。

 今回認可を申請していた新規業務では、終身保険について、解約返戻金を低く抑えることにより保険料を低廉化。定期年金保険の解約返戻金を低く設定するとともに、長期の年金支払期間などを定めるとする。入院特約については、入院初期保険金(選択制)の追加、手術保険金の支払い対象の変更などを行い、終身保険に付加する特約については、「無解約返戻金型」「解約返戻金低減型」を設定、災害特約を見直して無配当化する。また、第一生命の経営者向け介護保障定期保険の受託販売を行うこととしている。
 3月の認可申請に対し、郵政民営化委員会は6月14日、森信親金融庁長官と山本早苗総務大臣宛てに当該新規業務に関する意見を提出。基本的な考え方として、①利用者利便の向上②適正な競争関係③業務遂行能力・業務運営態勢④経営の健全性の確保―の4点を挙げた。
 このうち、①の「利用者利便の向上」で、郵政民営化に当たっては、利用者利便の向上が重要な目的であるとして、「新規業務に係る調査審議においても、この点に十分留意する必要がある」と指摘。業務の展開に際し、民間金融機関として顧客満足を向上させるため、顧客ニーズへの的確な対応や郵便局での一元的対応を行うことが期待されるとした。②の「適正な競争関係」については、他の金融機関への影響は利用者利便の向上を中心に考えるべきとした上で、「懸念材料があるから実施させないという手法は極力採るべきでなく、できる限り競争を促す方向で検討することが重要」との所見を示した。
 また、③の「業務遂行能力・業務運営態勢」については、「申請に係る業務により新たに必要となる態勢について、民間金融機関として求められる所要の態勢を整備することが必要」とし、④「経営の健全性の確保」については、株式会社として投資家の信認を得られるよう、財務の健全性を確保すると同時に、厳格なコスト管理態勢の下で効率的な経営が行われるべきと指摘。「新規業務については、顧客ニーズを的確に反映しつつ、健全経営の確保に寄与するものとして展開」されるよう求めた。
 これらの見解を示した上で、新規業務に言及。「終身保険等の見直し」「法人向け商品の受託販売の充実」のどちらも、コア・コンピタンスとの関係が強い業務で、すでに市場で提供されている定型的な商品・サービスであるとし、かんぽ生命の経営課題の克服やサービスの充実化などに資すると評価した。
 同委員会は以上の観点に基づき、本件新規業務について調査審議を行った結果、いずれもその実施に問題はないと結論。解約返戻金を低く設定するなどした商品については、その販売に当たり顧客への説明を適切に行うなど、業務の適正かつ確実な実施を確保することが重要としながら、「終身保険等の見直しにより、低金利環境の継続、平均寿命の延伸、医療環境の変化等の環境変化に対応する顧客のニーズに応えることができることから、利用者利便の向上に資する」との判断を示した。
 同じく法人向け商品の受託販売の充実についても、「他の生命保険会社から受託する法人向け商品のラインナップの充実が図られ、高齢化の進展に伴う法人顧客の介護保障ニーズに応えることができる」との理由から、利用者利便の向上に資するとした。
 なお、業務を実施する場合の留意事項として、金融庁長官・総務大臣は、申請に係る業務の開始後も、かんぽ生命の業務遂行能力・業務運営態勢が整えられ、利用者保護やリスク管理に支障がないよう業務展開が進められていることを継続的に確認する必要があると付言した。

生保協会は民営化委員会に意見
 郵政民営化委員会の意見に対し、生保協会は同日声明を発表し、これまで委員会の意見募集や事業者団体ヒアリングで、協会としての意見を表明してきたことを説明。かんぽ生命の業務範囲の拡大に当たっては、株式完全売却を通じた公正な競争条件の確保や業務内容に応じた適切な態勢整備の必要性を訴えるとともに、現状では「公正な競争条件」が確保されておらず、「終身保険や定期年金保険の見直しについては、学資保険と同様、市場へ大きな影響を及ぼす可能性が払拭できないため、これらの商品の認可は容認できない」等の見解を再度強調した。その上で、かんぽ生命の業務規制の緩和は「利用者利便性の向上」と同様、市場や民間生命保険会社に及ぼす影響についても慎重な判断が求められるとの見解を示し、「適正な競争関係」に関して、同委員会との間に認識の相違があると述べた。
 あらためて、かんぽ生命の株式完全売却に向けた道筋の明確化と確実な実行を求め、郵政民営化委員会に対し、商品発売後の販売動向等についてモニタリングを実施するとともに、競争関係にある生保業界と十分な対話をするよう要望した。