2017.06.09 生保会社の2017年3月期決算 一時払商品の販売休止が影響

 生保各社はこのほど、2017年3月期決算を発表した。それによると、日銀のマイナス金利政策を背景とする超低金利環境の継続を踏まえた一時払の貯蓄性商品の予定利率引き下げや一部販売休止などの影響で、多くで保険料等収入が減収した。その中で、商品構成を保障性商品にシフトし、医療、介護など第三分野商品の販売を増加させている会社が多くなった。基礎利益は減益のところがあった一方で、効果的な資産配分の実施などで増益を達成したところもあった。〈4~6面に生保協会会員各社の業績詳細を掲載〉

 かんぽ生命は当期純利益が前年度比4.4%増の885億円と増益を達成し、通期業績予想比103%となった。個人保険の新契約年換算保険料は、前年度末比4.7%増の5079億円、第三分野の新契約年換算保険料は、同12.4%増の557億円だった。個人保険の保有契約年換算保険料は、4兆9796億円と前年度末並みの水準を維持した。第三分野では7361億円と12月末から15億円増加した。足元の低金利環境を受け、リスク性資産(外国証券・国内株式)への投資を7兆9637億円(総資産の9.9%)まで拡大した。
 日本生命は単体・連結業績ともに減収・減益だった。保険料等収入は三井生命、16年10月3日に買収手続きを完了したオーストラリアのMLC Limited(MLC)の業績が連結反映されたものの、予定利率の引き下げ等による一時払円建終身保険の販売減少や、銀行窓販商品の販売停止、日本生命単体で前年に大型団体契約を獲得した反動等を主因に減収した。基礎利益は三井生命、MLCの業績が連結反映されたものの、日本生命単体で低金利の影響等により、利息および配当金等収入が減少したことなどから減益となった。国内の個人保険・個人年金保険については、新契約業績が保障額等・年換算保険料は増加、件数は減少した。保有契約業績は件数・年換算保険料は増加、保障額等は微減した。
 明治安田生命は日銀のマイナス金利政策を背景とする超低金利環境の継続を踏まえ、一時払の貯蓄性商品の予定利率引き下げや一部販売休止ならびに団体年金の引受抑制等、資産・負債の計画的なコントロールを実施し、保険料等収入は「減収」となったものの計画通りの実績となった。基礎利益は、グループベース・明治安田生命単体ともに「増益」を確保。グループベースについては、16年3月に子会社化したスタンコープ社が貢献した。単体については、厳しい運用環境下、減益の見通しとしていたものの、危険差・費差の増加に加え、効果的な資産配分の実施等により利差の減少幅を抑えたことから、増益を達成した。
 第一生命グループの連結経常収益は、6兆4567億円を計上、前年度比17%減となったものの、連結純利益は、同30%増の2312億円となった。連結純利益が上場来最高を記録したのは、好調な海外生保事業のけん引など、事業分散効果に加えて、第一フロンティア生命の責任準備金戻し入れによる増益も反映している。連結経常収益は、低金利の環境下で円建て一時払い貯蓄性商品などの戦略的販売抑制を主な要因として減収となった。しかし、国内生保事業で商品構成を保障性商品にシフトさせることを進め、医療、介護など第三分野商品の販売が増加した結果、減収幅は期初に想定した範囲内に収まっている。
 住友生命の連結保険料等収入は前年度比13.6%増の3兆4588億円で増収となった。グループ基礎利益は同7.8%増の3330億円で増益を確保した。グループの新契約年換算保険料(合算値)は同82.3%増の3164億円、保有契約年換算保険料(合算値)は前年度末比6%増の2兆7394億円だった。住友生命単体の新契約年換算保険料は、平準払いの個人年金保険の販売増加等により、前年度比49.5%増の2529億円と大幅な伸びを示した。15年9月に発売した就労不能保障「1UP」の効果もあり、第三分野も前年度比6%増の424億円と堅調だった。
 ジブラルタ生命は、「高度障害療養加算型家族収入保険」や「米国ドル建終身保険(低解約返戻金型)」等の販売が好調に伸展し、個人保険と個人年金保険の新契約高が前年度比11.7%増の3兆9708億円となった。個人保険新契約年換算保険料は同横ばいの851億円だった。保険料等収入は再保険取引による保険料が減少したことにより、1兆1364億円(同8%減)。また、期中、為替が前年度に比べて円高で推移し、円換算での外国証券にかかる利息および配当金等収入が減少したこと等に伴い、基礎利益は1249億円(同2.3%減)となった。当期純利益は、同24.1%増の597億円となった。
 アフラックは、がん保険の販売が前年度比3.9%増加したものの、医療保険や第一分野商品の販売が減少したため、個人保険分野全体での新契約件数は、同5.4%減の155万件となった。これに伴い、年換算保険料も同7.1%減の892億円となった。保有契約件数は、がん保険が1500万件を超えるなど順調に増加し、個人保険分野合計では前年度末比1.8%増の2420万件、年換算保険料は同1.4%増の1兆4063億円、うち第三分野は1兆547億円となった。
 メットライフ生命の新契約年換算保険料は1046億円(前年度比12.8%減)、保険料は1兆4466億円(同0.7%減)、保有契約件数は880万件(前年度末比2.6%増)、基礎利益は1105億円(前年度比188.5%増)だった。一部の円建て商品の販売休止や料率改定を行い、新契約年換算保険料および保険料は減少したものの、外貨建て保険や医療保険の販売は堅調に推移した。特に、平準払いの外貨建て保険商品の売り上げは前年度比53%増となった。また、医療保険の販売には、付加価値の高い「ヘルス&ウェルネス」のサービスを拡大したことが追い風となった。
 T&D保険グループの連結保険料等収入は1兆5052億円で前年度比4.4%減の減収となったものの、グループ基礎利益は同68億円増加して1599億円と増益を確保した。新契約高は主に大同生命の主力の個人定期保険の販売が堅調だったことから、同10.3%増の6兆5064億円だった。新契約年換算保険料は金利低下により一時払商品の一部を販売抑制・休止したが、平準払商品の販売が増加したことから、同3.3%増の1370億円、このうち医療保障・生前給付保障等の第三分野は同16.5%増の286億円と好調だった。
 フコク生命グループは保険料等収入が富国生命の団体保険やフコクしんらい生命の減少で前年度対比17.8%減の6487億円となった。基礎利益は同3.5%減少したが、915億円と4年連続で900億円台を確保した。新契約保険料は第三分野が好調だったため、富国生命が同12.3%増の263億円だったが、2社合算では同16.3%減の330億円となった。
 朝日生命は認知症保険をはじめとする新商品の効果によって、第三分野の新契約と保有契約の年換算保険料が順調に伸展した。新契約年換算保険料は前年度比114%、そのうち第三分野は同125.2%。保有契約年換算保険料は同99.4%だったものの、そのうち第三分野については107.7%となった。