2017.05.23 東京海上HD 17年3月期決算、国内損保事業の保険引受利益拡大
東京海上ホールディングスは5月19日、2017年3月期決算を発表した。連結経常収益は前年度比14.3%増の5兆2326億円で、このうち正味収入保険料は前年度比6.6%増の3兆4804億円となった。東京海上日動で火災保険の減収があったものの、Tokio Marine HCC(TMHCC)の新規PL連結等によって増収した。生命保険料は、国内生保事業における保有契約の拡大や変額保険の解約減少、TMHCCの新規PL連結等により増収し、同91.7%増の9044億円となった。また、国内損保事業での保険引受利益拡大等により、連結経常利益は同0.5%増の3876億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同7.6%増の2738億円で増益となった。異常危険準備金の繰り入れやのれんの償却負担等の影響を控除した修正純利益は同15.6%増の4067億円だった。
国内損保事業では、東京海上日動の保険引受利益が前年度比1022億円増益の1161億円となった。主な要因は、▽自動車保険の増収▽自然災害に係る発生保険金の減少▽前年度の大口事故に係る発生保険金増加等の反動▽事業費における火災保険の減収を主因とした手数料の減少▽異常危険準備金における自動車グループの繰入率の引き下げを主因とした積増負担の減少―など。
正味収入保険料は、火災が2015年10月の長期火災の保険期間短縮に伴う単価低下および前年度の商品改定前の契約見直しの反動を主因として同10.3%減の2722億円と減収した。海上保険は同10.9%減の589億円で円高の影響を主因として減収した。傷害保険は大口契約の増収があったものの、業務災害向け傷害保険のその他種目への種目移行により減収し、同1.8%減の1722億円となった。自動車保険は同2%増の1兆513億円で、件数増加とこれまでの商品・料率改定を主因として増収となった。「その他」は、外貨建契約での円高による減収の一方、傷害保険からの種目移行および国内での増収を主因として増収し、同3.2%増の2786億円だった。正味収入保険料合計は同0.6%減の2兆1161億円と微減した。
正味支払保険金は同40億円増加し、1兆1791億円となった。E/I損害率は同2.4ポイント低下の57.7%、事業費率は事業費が減少したものの、正味収入保険料の減収に伴い前年度比0.1ポイント上昇の32.7%、コンバインド・レシオ(民保E/Iベース)は同2.2ポイント改善し、90.4%となった。
資産運用等損益は子会社からの配当金収入の減少に加え、金融派生商品損益の減少、有価証券売却損益の減少等によって同1646億円減益の1974億円となった。
経常利益は同648億円減の3124億円、当期純利益は529億円減益の2486億円だった。単体ソルベンシー・マージン比率は114.6ポイント上昇し、860.9%となった。
日新火災の保険引受利益は81億円で同2億円増益した。正味収入保険料は賠償責任保険・労働者災害補償責任保険を中心とした新種保険が増収した他、火災保険における出再保険料が減少した。発生保険金は自動車保険における対物賠償での支払単価が上昇したものの、自然災害に係る発生保険金は減少した。
資産運用等損益は利息および配当金収入の減少等により、同7億円減益の12億円となった。
経常利益は同6億円減の90億円、当期純利益は法人税等を加減した結果、同4億円増益の65億円となった。単体ソルベンシー・マージン比率は1325.5%と同197.8ポイント上昇した。
東京海上日動あんしん生命は新契約年換算保険料が同0.9%増の1207億円で個人年金保険の販売休止の影響はあるものの、おおむね横ばいだった。長期貯蓄性商品を除いたベースでは、前年度に発売した新商品効果が一巡したものの、家計保障定期保険の新商品や標準利率改定前の契約増加によって、同13%増の1135億円となった。
保有契約年換算保険料は変額商品の運用期間満了に伴う一括支払いにより減少したものの、新契約による増加が上回ったため、同4.4%増の8313億円となった。
当期純利益は事業費の増加や前年度の変額商品に係る危険準備金戻入の反動、有価証券売却益の減少等で、同59億円減益の87億円となった。基礎利益は経常利益から危険準備金戻入の反動や有価証券売却益の減少等の影響を控除した結果、同27億円減益の223億円だった。
海外保険事業の正味収入保険料はTMHCCの貢献や各事業における成長施策の進展等により同27%増収(円高進行の影響を除いた現地通貨ベースでは32%の増収)し、1兆6544億円となった。事業別利益合計は1695億円で同376億円(29%)の増益(円高進行の影響を除いた現地通貨ベースでは34%の増益)となった。
17年度の通期連結業績予想は、正味収入保険料で海外保険会社が円高進行の影響を受けるが、国内損保事業での引受拡大により増収を見込み、0.3%増の3兆4900億円としている。生命保険料は、国内生保事業で保有契約が拡大するものの、海外保険会社における円高進行の影響等による減収を見込み、1.6%減の8900億円の見通しとしている。
連結経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は海外保険会社が為替変動の影響を受けるが、国内生保事業での責任準備金負担の減少やのれん償却負担の減少等によって増益を見込む。東京海上日動単体の経常利益見込みが8.5%増3390億円、あんしん生命単体の経常利益見込みが160.4%増345億円などで、連結経常利益は、4.5%増の4050億円を見込む。親会社株主に帰属する当期純利益は、2.2%増の2800億円の予想。グループ全体の利益指標である修正純利益は、国内損保事業における政策株式売却益および受取配当金の減少、海外保険会社における為替変動の影響等による減益を見込み、6.1%減、3820億円としている。