2017.05.01 東京海上日動・NTTデータ、ブロックチェーン実証実験完了

 東京海上日動とNTTデータはこのほど、2016年12月から開始した保険証券へのブロックチェーン(注)技術適用に向けた実証実験について、3月で完了したと発表した。両社では、同実験を通して、保険証券のみならず貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有効性が確認され、実用化に向けては貿易関係者が協調して課題解決を進めるグローバルな枠組みをつくることの必要性が認識されたとしている。なお、ブロックチェーンを利用した保険証券のデータ化の実証実験を完了した事例は、両社によれば国内初となる。
 同実験では、外航貨物海上保険の保険証券についてブロックチェーンによるデータ化を実施し、関係者の適切なアクセス性能、業務効率性、セキュリティー性能などの観点から実運用を想定した検証ならびに、これに伴う人的コストや書類の送達コストなどの削減効果について検証した。
 また、保険証券のデータ化に当たっては、同じくブロックチェーン上にあるL/C(信用状)やInvoice(商業送り状)、B/L(船荷証券)の情報を取り込み、これをブロックチェーン上の保険証券に反映することで、他の貿易関係書類との連関性についても検証した。
 同実験で実証できた主な結果は次の通り。
 実際のブロックチェーン上において、関係者の適切なアクセス性能、業務効率性、セキュリティー性能について各種の検証を行い、いずれも当初の仮説を実証することに成功した。
 各種のコスト削減効果についても測定をすることができ、当初の目的を達成した。
 L/C、Invoice、B/Lをブロックチェーン上で取り扱った結果、保険証券のみならず貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有用性を確認できた。
 貿易業務全体がブロックチェーンによって電子化された場合には、貿易関係者の業務効率が向上し、到着港における貨物の引き取りが促進されることから、保険会社の算定する港湾における貨物集積リスクが減少し、危険負担コストの減少につながることも確認された。
 輸出入貨物に関わる保険である外航貨物海上保険は、保険証券が売り手から買い手に譲渡されるため、保険証券は、国を跨いで譲渡が行われ、銀行などの貿易関係者を介して国際的に流通する。しかし、その流通は紙書類によるものが中心であり、貨物の買い手への到着に時間がかかるとともに、紛失リスクがあることなども課題となっていたことから、両社では今回の共同実証実験を行った。
 今後、NTTデータは実用化に向けた課題解決のために、国内外における幅広い貿易関係者が参加する業態横断のコンソーシアムを企画、検討している。
 東京海上日動は貿易業務の発展に向けて、損保会社の立場で、本実証実験で抽出された課題の解決を目指すとともに、他業態への貿易取引におけるブロックチェーン活用の普及に向け、NTTデータが設立を目指すコンソーシアムへの参画を検討している。
 (注)データの耐改ざん性を確保した状態でネットワーク参加者間での情報共有が可能な分散ネットワーク技術。