2017.02.21 損保協会、17年度の自賠責運用益拠出事業
損保協会は2月17日、業界紙向け定例記者会見を行い、2017年度の自賠責運用益拠出事業について、新規3事業を含む全36事業に総額19億1116万1000円を支援すると発表した。特に、高齢者の自動車事故防止と被害者対策に関する事業への支援に注力する。また、16年度地震アプリケーション研修会を実施したことを報告した。
同協会では、各損保会社から拠出される自賠責保険の運用益を活用して、1971年から自動車事故防止対策事業や被害者対策事業などを支援している。2月16日に開催された同協会の理事会において、2017年度は新規の3事業を含む全36事業に総額19億1116万1000円の支援を行うことを決定した。事業の内訳は、自動車事故防止対策に1億1395万9000円、救急医療体制の整備に5億7330万9000円、自動車事故被害者対策に9億9525万9000円、後遺障害認定対策に7000万円、医療費支払適正化対策に1億5863万4000円。
新規事業として拡充したのは、①高齢運転者の事故予防に向けた運転能力の適正評価と早期介入に関する研究②高齢歩行者の視力と交通事故に関する研究③高次脳機能障害者家族による家族支援サポートシステム構築に向けたプログラム作りへの支援―の3事業。①では、高齢運転者事故の特徴を医学的・工学的に解析し、加齢に伴う心身機能の低下との具体的な関係性を調査することで、日常の医療現場において早期に適正な運転能力評価や運転指導ができる環境整備を目指す。②では、高齢歩行者事故について、加齢に伴う視力低下との具体的な関係性を解明することで、特に運転免許を保有していない高齢者に対して、適切な視力検診・視機能改善を提供できる社会制度の構築に向けて、国や地方自治体に提言を行う。③では、高次脳機能障害者の家族が、他の当事者や家族に対して支援者としての役割を果たすための研究・教育プログラムを構築することで、高次脳機能障害者支援の一層の充実を図る。
一方、交通事故防止用機器の寄贈、公的病院への救急医療機器購入費補助、交通事故無料相談事業支援については減額する。
16年度地震アプリケーション研修会の実施報告では、地震アプリケーションの全体像や操作方法についての知識を深めるとともに、各損保会社で実施する研修の講師役となる人材を養成するため、2月3日に損保会社本社損害サービス部門社員や日本損害保険鑑定人協会会員の鑑定人事務所向けに開催したことを説明した。地震アプリケーションは、地震災害における立ち合い調査やオフィス事務の生産性向上、より迅速で保険契約者に分かりやすい対応の実現を目的に開発。地震保険の損害認定における被害建物の損傷状況、写真、図面をタブレット端末に入力することで、電子的に地震保険損害調査書を作成することができる。現在、地震アプリケーション研修用DVDの作成や研修用IDの追加配備など、各損保会社で個別に研修できる体制整備を進めている。今後は各損保会社での社内研修などを通じて地震アプリケーションの利用拡大と普及・促進に取り組むとしている。
会見ではこの他、4月1日から協会事務局の組織を改編することや、世代別の損害保険・防災教育の取り組みとして「小学生のための自転車安全教室 教師用学習指導案」を作成して普及に努めていること、募集人試験・教育制度整備支援のためにカンボジアを訪問したことなどを報告した。