2017.01.17 自賠責保険審議会、4月から保険料引き下げ
自賠責保険の保険料見直しを検討する第136回自賠責保険審議会は1月12日、4月から保険料を引き下げる方針を決めた。安全技術の普及で交通事故が減少し保険金支払金額が減り収支で黒字が続いていることと、運用資産の拡大も見込めることから引き下げを決めたもので、これは9年ぶり。また、引き下げの対象になる契約について、公平を期し5年間の還元期間を設定した。損保料率機構は、車種ごとにどの程度引き下げるかの新基準案を19日開催予定の次回審議会に提出する。これを受けて具体的内容が決定される。
2016年の自賠責料率検証の結果、予定損害率100.2%(13年改定)に対し乖離(かいり)率16年度は5.5%減、17年度が5.9%減と連続して減少し、しかも乖離幅が広がっていることから収支の黒字拡大が見込まれる。
また、自賠責保険の運用積立金残高が17年3月末で2100億円を上回り、16年度保険金支払額の26.9%をも占めるほど多額になっていることから、累計収支残高の増加が見込める。
保険収支、資産運用両面で今後も安定した状況が継続するとの見通しから、今回の保険料引き下げを決定したもの。料率の引き下げ改定をする場合、その財源を契約者に還元するため累計収支残の還元期間を設定する必要があるが、その期間を5年とすることも決めた。これは、自賠責保険の最長期間が5年なので、契約者間の公平を期すため。
料率検証のためのデータによると、収入純保険料は前回の引き上げ改定以後8000億円台を維持し、毎年200~400億円の安定した黒字を計上してきた。支払いの重要な要素となる交通事故発生件数が減り、それに対応して、死傷者、負傷者ともに05年から一貫して減り続けている。最近の減少は安全技術の普及を反映している。
これらの検証については、次のように要因別に予測している。
収入純保険料については、保有車両数として16年度8928万台(0.2%増)、17年度以降は8933万台(0.1%増)と予測。
事故率は、死亡事故が16年度3.9%減、17年度以降が2.6%減、後遺障害事故率は16年度0.8%減、17年以降0.6%減、傷害事故率は16年度0.8%減とし、17年度以降は0.6%減とみている。
平均支払保険金に影響を与えるものとしては三つの項目を挙げている。賃金上昇率は16年度、17年度以降ともゼロ%と見込んでいる。治療費上昇率は16年度が0.33%増、17年度以降では0.28%増と予測。近年、平均入院日数が増加傾向をたどっていることを勘案したもの。支払い基準改定による上昇は、17年度以降0.05%増としている。
事故率の推移では、当該年度に保険責任がある車両数に対してその年度に発生した事故件数の割合をみると、死亡は10年度が10万台当たり637件だったのが、16年度が463件、17年度には451件と、30%に近い減少となる見込み。傷害、後遺障害についてみても、16年度、17年度ともに減少が予測されている。
支払件数および平均支払保険金の推移をみると、死亡件数は08年の5796件をピークに減り続けている。16年度は3756件、17年度は3653件と見込み、これはピーク時に比べて約4割の減少。
平均支払保険金は10年度以降減り続け、16年度と17年度も同様の傾向をたどるとみている。