2017.01.11 大手生損保、地域連携を強化、政府戦略背景に協定増加

 政府の総合戦略「まち・ひと・しごと創生」(2015~19年の5カ年)を背景に、大手生損保が地域との連携を強化している。営業職員や代理店は地域に密着した活動を行っており、グループ全体でサービスを提供できるのも大手社の強みだ。特に16年度からは、「それまでの支社ごと取り組みを本社主導に変更」「本社から支社を支援する仕組みを構築」「自治体(都道府県および市町村)や企業・団体などとの包括的連携を拡大」などの動きが目立っている。
 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、人口減少克服・地方創生のためには、三つの基本的視点①「東京一極集中」の是正②若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現③地域の特性に則した地域課題の解決―から取り組むことが重要として具体的な施策を示した。「地方を主体とした枠組みの構築」を目指していることもあり、企業からのアプローチを歓迎する自治体が増えており、民間からの提案を公募する自治体も出てきている。
 保険会社内の組織変更としては、16年4月に、日本生命が法人職域業務部内に重点市場開発担当として専任人材を配し、あいおいニッセイ同和損保は全社的な取り組みとして「地方創生プロジェクト」をスタートさせた。7月に「地方創生室」を設置した東京海上日動は、それまでの取り組みをさらに加速させるとともに具体的な施策も増やす計画だ。
 損保では、BCP、農業支援、海外進出企業支援、経営支援、地域産業活性化のための物産展などを行っており、自治体とのコミュニケーションの中から保険商品の誕生につながる事例(損保ジャパン日本興亜が「予防的避難勧告」の推進をサポートする自治体向け保険を開発し今春の発売を予定するなど)も出てきた。三井住友海上では、自治体のニーズに合わせた多様な協定を結んでおり、経営革新等支援機関の立場を生かした経営支援や、「三井住友海上経営サポートセンター」「インターリスク総研」などグループ力も生かしている。
 生保では、全ての自治体の課題でもあるがん対策や健康増進に関わる連携を中心に、独自性の高い取り組みが見られる。住友生命では15年から、自治体とのがんを含む健康増進への事業連携協定や包括協定を拡大しており、がん検診の受診勧奨、セミナーの開催、啓発冊子の作成などを行っている。日本生命は、健康分野で貢献するとともに産業振興(ビジネスマッチングイベントの開催など)や教育・文化・スポーツ振興、障がい者の社会参加などの幅広い連携を打ち出す。
 明治安田生命では、営業職員が取り組む子どもや高齢者を見守る「地域を見守る社会貢献活動」で140以上の自治体と協定を締結しており、また、全国78支社などでJリーグの全53クラブなどとスポンサー契約を結び、各地職員の参加による試合応援や子どもサッカー教室の開催などで地域の活性化や子どもの健全育成を図る。
 第一生命の包括連携協定を締結している3ナショナルセンター(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センター)との合同セミナー(全国で開催)も特徴ある取り組みだ。
 各社は「地域を支援することが保険事業にもつながる。WIN―WINの関係を構築したい」としており、さらに地域支援を拡充させていく考えだ。