2016.12.05 日本IBMが「ERMソリューションセンター」新設

 日本アイ・ビー・エムは、保険業界におけるERM(統合リスク管理)、IFRS(国際会計基準)、ソルベンシー規制、ICS(国際資本規制)などへの対応に関する新業務やシステム構築などをワンストップで支援する「ERMソリューションセンター」を新設し、12月5日からサービスを開始した。これまで規制ごとに多大なシステム投資を要してきたERMなどの規制対応に対し、同社が持つフレームワークを基に、国内外の実績に基づいた知見・ノウハウを活用したERMシステム基盤を構築するとともに、コンサルティングサービスなどを提供することで、保険会社のERM業務構築における拡張性を保持した上でコスト削減の実現やERM経営の高度化を支援する。
 「ERMソリューションセンター」では、先行する欧州のソルベンシー規制対応での知見や国内で培ったERMやIFRS保険契約のシステム構築実績、銀行業における知見の他、欧州やシリコンバレーなどのエコシステムネットワークを生かした最新のテクノロジーを活用する。具体的には、新たな顧客体験を創出するためのアプローチである「IBM Design Thinking」を利用した構想計画(ブループリント)の作成支援、長期的な視点に立ったシステム化を中心とした基本構想策定業務、パイロットシステムによる事前評価、新業務構築のコンサルティング、ERMシステム構築支援などのサービスを提供する。
 構築するERM基盤においては、複雑で大量の計算処理を短時間で処理できる高い計算能力を備えたサーバー環境や、精緻化された過去・現在・将来予測データをリスク管理部門などが自由に検索し分析できる環境、経営者向けのダッシュボード機能などを提供する。また、四半期で膨大に膨らむデータ処理を分散するためのクラウド技術の活用をはじめ、「IBM Watson」に適用されているコグニティブ技術を活用した不正請求対応やレピュテーションリスク、リスク分析支援などに対応するためのソリューションを開発していく予定だ。
 国内保険業界では、規制やガバナンス強化、災害リスクの巨大化・多様化、ビジネス拡大などを背景に、経営基盤の強化としてERM経営への関心が高まっている。また、国際的な資本規制の強化に伴う対応として、新ソルベンシー規制、ICS、IFRSへの取り組みが重要な課題となっている。これらに対応するためには、規制ごとに対応するのではなく、長期的な視野に立った計画を立てるとともに、追加のIT投資を抑えて共通プラットフォームの業務環境を構築することが必要不可欠だ。
 同社では、保険会社がERMやIFRS、ソルベンシーなどへ対応するためのプロジェクト推進に当たり、ERMシステムの計画立案、ツール選定、システム化計画作成をはじめ、ERMなどの推進に必要となるDWH(データウェアハウス)の計画立案、要件定義、設計・テスト、保守まで支援してきた。また、保険数理システム、資産運用リスク管理システム、オペレーショナル管理システムなどの提供・導入支援の他、既に導入している他社のアクチュアリー関係システムと連動した全体のシステム構築なども行ってきた。
 今回、「ERMソリューションセンター」を構築したことで、これらのサービスがワンストップで提供できるようになるとともに、拡張可能な一つのERM基盤を構築すれば、規制ごとの対応にかかるシステム構築コストなどの削減になる他、一つの基盤で各種データの管理・分析が可能になり、ERM経営の高度化を実現する。
 保険サービス事業部保険ビジネスアーキテクチャ部の今野玲部長は「国内保険業界では損保会社が先行してERMやIFESシステムを導入しているが、多くの生保会社は検討段階といった状況だ。今後は新ソルベンシー規制やICSなどへの対応も求められることから、当センターを通じてサポートしていきたい」と言う。また、「グローバルなシステム上重要な保険会社(G―SIIs)の一部では、海外子会社の会計システムなども統一し決算の早期化を実現している。当センターを通し、国内保険会社のグローバル化や効率化、コグニティブなどの最新技術を用いたリスク管理の高度化に向けた強固な支援ができるよう、体制強化を図っていきたい」と話している。