2016.11.24 生保協会、高齢者対応高度化に向けて提言

 生命保険協会の根岸秋男会長は、11月18日の日銀記者クラブ定例会見で、来年1月に高齢者対応の高度化を推進する「番号制度の民間利活用」への提言に向けたシンポジウムを開催すると発表した。シンポジウムでは業界がこれまで取り組んできた高齢者対応をPRするとともに、保険への番号制度利活用実現に向けた意見交換やメリットを訴求。シンポジウムでの有識者の意見を踏まえ、提言書をまとめる予定だ。会見ではこの他、日銀の実施した指し値オペに関して意見を求められると、生保業界では超長期ゾーンでのオペが重要とした上で、「超長期ゾーンの買い入れ減額を期待している」との見解を示した。
 生保協会では、2017年1月19日に「生命保険業界における高齢者に配慮した取り組みの推進『番号制度の民間利活用』への提言」をテーマにシンポジウムを開催する。根岸協会長は、シンポジウムでのパネルディスカッションのテーマとして提言書(骨子)を作成したとし、その内容を説明。番号制度利活用による高齢者への一層のサービス向上として、行政が保有する生存・死亡情報による高齢者の安否把握の高度化、住所情報による所在把握の高度化、契約者の確実・迅速な保険金の受け取りや請求手続きの負担軽減などにつながるという。このシンポジウムを踏まえ、4月には最終提言書をまとめ、公表する予定。
 記者から次期米国大統領のトランプ氏と安倍晋三首相の会談、現状のマーケット水準の見解と生保各社にとっての販売・運用面での影響を問われると、両氏の会談については「緊密な日米関係を体現するものになってほしい」と期待を示した。マーケット水準については、選挙開票前よりも5円程度ドル買いが進んでいるとしながら、その理由としてトランプ次期大統領の政策から「所得税、法人税の減税とインフラ投資支出拡大を通じた財政政策が経済成長を高めると市場が判断したためだろう」と分析。米国金利の上昇にも言及し、「国内金利が日銀の金融政策で低く抑えられている中、日米金利差が拡大していることも為替に影響を与えている」と示唆した。
 また、現在の市況が生保会社の販売や運用に与える影響について、10年金利がプラス圏まで上昇したとはいえ生保業界を取り巻く環境は変わっていないとし、販売面では「金利影響が大きい一時払い商品や短期の平準払い貯蓄性商品の予定利率引き下げ、販売停止などの動きは変わらない」と大きな変化はないと明言。運用面についても、ALM運用を基本に、海外公社債やクレジット投資拡大による収益力向上につなげる傾向に変わりはないとの見解を示した。
 さらに、日銀が実施した指し値オペの評価を記者から問われると、現在の水準での指し値オペ実施は意外とし、「10年金利上限をプラス0.1%程度まで容認してくるのではないかと想定していた。タイミングが少し早かったというのが正直な感想」と回答。今回の指し値オペは、日銀が重視する短・中期ゾーンの金利に対してであり、生保業界は超長期ゾーンのオペが重要とした上で、「買い入れ平均残存期間の定めを廃止したこともあり、超長期ゾーンの買い入れ減額を期待している」との考えを示した。
 この他、金融機関窓販における手数料開示による収益・決算への影響について「現時点での見通しは難しい」、また、国内生保市場については「10年から20年のスパンで成長する余地は大きい」との見解を示した。「会員各社が創意工夫の下、最終的に顧客ニーズに応えるための商品開発、販売チャネルの多様化を進めていくことになる」と協会長としての考えを述べた。