2016.11.14 東京海上日動、「被害者救済費用等補償特約」開発、自動運転の事故に対応

 東京海上日動は、自動車の自動走行システム(自動運転)による事故に対応する保険商品として「被害者救済費用等補償特約」を開発し、2017年4月以降に始まる自動車保険契約に無料で自動付帯する。原因が不明確な自動車事故に対する保険金支払いができるようにし、迅速な被害者救済を図る。自動運転車の事故をカバーする商品としては業界初で、現在、官民で進める自動運転の取り組みを後押ししそうだ。
 同特約は、運転者が操作する自動運転中の事故に際して、賠償責任の有無にかかわらず同社が保険金を支払い、その後、損害賠償請求権の移転に伴い賠償義務者に直接求償する。事故発生当初で責任の所在が不明確なケースや、自動運転システムの欠陥などが公的機関による調査によって判明し、被保険者に賠償責任義務がないことが認められた場合でも補償する。例えば、システムの誤作動による事故の他、駐車場に止めてあった自動車がハッカーにより操作され、隣の車両に接触して破損させたケースなど、賠償義務がない場合は現行の自動車保険では保険金が支払われない。そうした場合、事故の被害者は直接メーカーなどの関係者に損害賠償請求する可能性が想定されるが、個人で原因を追究し、賠償請求手続きを行うことは実際には難しいことから、同特約によってそうした被害者を救済する。
 自動走行システムの進展は、交通事故の削減や交通渋滞の緩和、環境負荷の低減といった大きな付加価値を社会全体にもたらすと期待されており、現在、政府や自動車メーカーなどが一体となって取り組みを加速させている。
 警察庁が3月に取りまとめた「自動走行の制度的課題等に関する調査委員会」報告書では、加速・操舵・制動をシステムが全て自動的に行い、システムからの要請があった場合にドライバーが対応する「レベル3」までは現行法が適用されると示されたものの、交通事故が発生した場合、「責任関係が複雑になることで交通事故被害者に対する補償が遅れることは避ける必要がある」と指摘されている。
 自動走行システムが普及する中で、自動車事故が発生した場合、従来のドライバー(加害者)・被害者といった事故の当事者に加え、製造業者やソフトウエア事業者など賠償義務者が多岐にわたるケースや、事故発生当初に原因が不明確なケースの発生が想定されており、事故原因や各関係者への責任の有無などの究明に一定の時間を要して、結果として被害者救済に遅れが生じる可能性がある。こうした課題を踏まえ、同社では、自動車事故の被害者への救済の重要性は不変との考えの下、同特約を開発した。同社では「自動走行システムが進展する中、あらかじめセーフティーネットとして迅速な被害者救済を担保する商品を提供することで、安心・安全なクルマ社会の実現に貢献するとともに、今後も社会環境の変化に即した商品開発を行っていく」としている。