2016.11.11 損保協会、学習指導要領改訂へのパブコメに金融・防災で11の意見提出

 損保協会は、文部科学省が9月9日から10月7日までの間に行った「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に関するパブリックコメントに、金融(保険)教育および防災教育の観点で9科目に対する11意見を提出した。高等学校を対象に公民科の共通必履修科目として新設される「公共(仮称)」に関しては、公助・共助・自助の役割分担あるいは社会保険を補完する民間保険の意義・役割や、災害に備える重要性とその一端を担う地震保険制度の意義について、学習指導要領およびその解説書等への明記などを要望した。年度内に中教審の答申があり、答申を踏まえ「学習指導要領案」がパブリックコメントに付される予定。
 損保協会は第7次中期基本計画の重点課題として金融経済教育(損害保険教育)の推進を掲げており、損害保険・防災リテラシーの向上を図るために、小・中学校、高等学校の年齢層別に各種啓発ツールを作成している。この他、金融庁や金融広報委員会、金融業界団体が参画する「金融経済教育推進会議」に参加しており、他団体との情報連携も実施している。
 本年度は、損害保険に関するリテラシーツールを、小学生向け、中学・高校生向け、大学・若年社会人向けなど、年齢層別に作成し、啓発・教育プログラムの充実を図っている。
 また、中学・高校向け防災教育副教材も8月に完成。これは、さまざまな自然災害が発生している状況を踏まえ、子どもたちとその家族、地域の安全・安心に役立ててもらうことを目的として、現場の教諭のアドバイスを得ながら、「家庭科」での活用を意識して編集した。
 学習指導要領は約10年度ごとに改訂されており、損保協会は今年3月28日に文部科学省に社会保険を補完する民間保険の役割など金融(保険)教育および防災教育等の必要性を訴える意見書「学習指導要領の改訂にかかる要望について」を提出した。
 今回の「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」への意見書で、高等学校公民科の新科目「公共(仮称)」に関しては、公助・共助・自助の役割分担、社会保険を補完する民間保険の意義・役割、地震保険の他、自立した主体として社会に参画し、他者と協働することの意義について考える力の養成に当たって消費者の権利や責任、多様な契約を取り扱う際の対応について学校教育段階から金融経済教育を取り入れることなどを求めた。
 小・中学校の「社会科」については、自然災害時における地方公共団体の働きや地域の人々の工夫・努力等に関する指導、防災情報の発信・活用に関する指導を行う際に、損害保険の補償機能あるいは生命保険の保障機能の学習指導要領およびその解説書等への明記を要望した。
 さらに小学校の「社会科」、高等学校の「地理総合(仮称)」「地理探求(仮称)」に関しては、防災マップ作りが地域の自然環境と自然災害との関わりや、そこでの防災対策について考察させるとともに、生活圏の課題を観察、調査、見学するアクティブ・ラーニングとして持続可能な社会づくりのための改善、解決策の探求につながる活動と考え、防災マップ作りを学習指導要領と解説書等に明記することを求めた。
 小・中学校、高等学校の「道徳」では、自転車による加害事故が社会問題化している中、児童生徒の発達の段階等を考慮し、興味や問題意識を持つことができるような身近な社会的課題の具体例として「賠償概念」を取り上げることを学習指導要領と解説書等へ明記することを要望した。
 小・中学校、高等学校の「特別活動」に関しては、防災を含む安全教育で自立した生活を営むことや、共に助け合う力について取り上げる際には、自ら備えることの重要性を発達段階に応じて教育できるよう、学習指導要領およびその解説書等に明記することを求めた。
 高等学校で「公共」を発展的に学習する選択履修科目として位置付けられる「政治・経済(仮称)」、小学校第1・2学年の「生活」、中学校の技術・家庭科の「家庭分野」、高等学校の「家庭科」、中学校と高等学校の「保健体育」に対しても要望を提出している。
 損保協会では今後も安全で安心な社会づくりに向けて損害保険・防災教育の必要性を発信していく方針だ。