2016.10.25 金融庁が平成28事務年度金融行政方針を公表、持続可能性に注目保険ビジネス
金融庁は10月21日、平成28事務年度金融行政方針を公表した。保険会社については、事業環境が大きく変化する中、各社のビジネスモデルが顧客ニーズに応えつつ、持続可能なものになっているかの実態把握を行うとした。また、昨事務年度に引き続き、資産運用の最適化、ERM態勢の高度化、ガバナンスの発揮状況などに注視していく意向を示した。
金融行政方針は、金融行政の方向性や目標を明確化したもので、昨年度から導入。進捗(しんちょく)状況や実績を年ごとに評価し、後に金融レポートとして公表する。本事務年度については①金融システムの安定/金融仲介機能の発揮②利用者保護・利便③市場の公平性・透明性/活力の確保―を通じて企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成などによる「国民の厚生の増大」を目指すとし、その実現のために①金融当局・金融行政運営の変革②国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換③「共通価値の創造」に向けた金融機関のビジネスモデルの転換―を図っていくとしている。
保険業界への具体的な施策としては、昨事務年度に続き、環境変化が保険ビジネスに与える影響について一層の分析を進め、保険会社のビジネスモデルが顧客ニーズに応えつつ、持続可能なものになっているかの実態把握に努める。加えて、生保会社にとって長期の保険負債を持つという特性が、リスク管理や資産運用の高度化の在り方を考える上で重要なことから、生保各社自らが保険負債の質の改善を視野に入れつつ、リスク管理と一体となった資産運用の最適化の観点でどのような取り組みを行っているか、また、どのような経済・市場の急激な変化の可能性(ストレスシナリオ)を想定し、どのような対応を行うかについて対話していくとした。
また、現在の低金利環境下で、経済価値ベースでの必要資本の確保とリスクテイクによる収益確保とのトレード・オフが生じていることから、保険会社による統合的リスク管理(ERM)態勢の高度化がより重要となっていることを踏まえ、各社のERM態勢の高度化の状況を確認するとともに、国際的に検討が進められている資本基準(ICS)の動向も注視しつつ、保険会社との対話を通じ、環境変化に対応するリスク管理を伴った健全なリスクテイクを促していく。
ガバナンスについては、昨事務年度に実施したM&A事例を題材とした大手生損保各社のガバナンスの発揮状況の検証についてフォローアップを行う。とりわけ、相互会社形態の保険会社について、経営陣が自社のビジネスのリスクを踏まえながら、どのように経営資源を投入し、どのような考え方で重要課題に対する意思決定を行っているかなどを引き続き実態把握していくとともに、経営陣と対話を行う。
保険会社の業務運営面では、5月に施行された改正保険業法において、顧客に対する情報提供義務、顧客の意向把握・確認義務、保険募集人の体制整備義務が導入され、これまでに実施した保険会社や乗合代理店における保険募集管理態勢などに関する水平的レビューの結果も参考にし、引き続き保険各社や保険募集人で顧客本位の取り組みが行われているか、対応状況などを確認する。
一方、かんぽ生命については、昨年11月の株式上場を踏まえ、企業価値の向上に資する観点から、民間金融機関との連携や、郵便局ネットワークの活用などを通じ、経済の持続的成長や国民の資産形成に貢献する取り組みの推進とともに、資産規模のコントロールや資産運用の多様化、およびそれに応じたリスク管理の高度化への取り組みを促すとした。